NIジャパンブログ

【翻訳記事】フィランソロキャピタリズムに気をつけろ(援助)


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画像をクリックすると、本記事のもとになったランセット誌の論文"The black box warning on philanthrocapitalism"のページが開きます。


2016年9月、Facebookの創設者であるマーク・ザッカーバーグは、2100年までに「すべての病気を治療、予防、そしてコントロールするために」30億ドルを投資すると発表した。グローバルな保健分野への新規参入者となる通称「フィランソロキャピタリズム」[訳注:企業による社会貢献活動のことを指す「フィランソロピー」と「キャピタリズム(資本主義)」の造語]は、世界の貧困層に必ず恩恵をもたらすものなのだろうか? ジョカリン・クラークとリンゼイ・マッギーは、11月号のランセット誌[訳注:世界でも評価の高い学術的な医学専門誌]でいくつもの懸念を示した。

一つ目は、フィランソロキャピタリストの説明責任が、多くの場合不十分であることが分かったということだ。たとえばザッカーバーグは、彼の資金を民間企業を通じて流している。だがその企業は、慈善事業を規制する法律の対象外で、営利目的の事業に投資することも可能な上、彼が個人的な目的追求のために利用することも規制されず、カネの流れを公にする義務もない。

二つ目は、資金提供者の基金が、課税を免れることができる点だ。これは国庫からの収奪となる。現在、政府の責務が民間財団に移行されてしまい、国が援助への参画から手を引いていくという流れが懸念されているが、それを加速させるものである。

最後に、その論文の執筆者たちは、選挙で選ばれていないフィランソロキャピタリストたちが、世界の保健と開発の政策に関する意思決定に影響を及ぼすことを危惧し、より強力で独立した監視を求めている。◆


2017年1/2月合併号NI499p9 Beware philanthrocapitalism (AID) の翻訳です。c499-100.jpg



  1. 2017/02/28(火) 22:52:53|
  2. ビジネス・企業

【翻訳記事】アフリカで最も才知あふれる若き発明者たち


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画像をクリックするとNIの英語記事のページが開きます。各発明者の写真のキャプションは次の通りです。
写真1枚目:ケニアのキスムにある、トゥクトゥクを電動車にする作業場の予定地を訪れたアレックス・マカリワ。
写真2枚目:エドウィン・インガンジは、ユーザーを効果的で効率的な緊急サービスに迅速につなぐ、ウサラマというモバイルアプリを開発した。
写真3枚目:ジェームズ・ヴァン・デ・ウェルトと彼が開発した箱の中のオフグリッドの電気供給システム「ソーラー・タートル」
写真4枚目:ジェームズ・ヴァン・デ・ウェルトのソーラー・タートルのバッテリーには、リサイクルのボトルが使われている。
写真5枚目:ピーター・ミリアが手にしているのは、彼が開発している階段を上るEコン車いすの小型化した試作機。
写真6枚目:工学イノベーション・アフリカ賞コンテストへ寄せられたモデルや機器。



階段を上る車いすや電動トゥクトゥク[訳注:東南アジアなどで使用されている三輪自動車で、通常はガソリンを燃料とする]は、コミュニティーが直面する課題に地元エンジニアたちが示した答えである。ローレンス・イヴィルの報告。

「999」[訳注:ケニアの警察通報用電話番号]に電話しても、誰にもつながりません」、とエドウィン・インガンジは嘆く。この22歳のケニア人は2014年後半、学校からの帰り道にナイロビで武装強盗に襲われながらも生き延びた。「みんなただ我慢していますが、限界です」

エドウィンは、工学イノベーション・アフリカ賞の候補者として残った16人の技術者のひとりだ。最終選考に進んだ彼らは、2016年11月にロンドンのショーディッジに集まり、自らの経験を熱く語り合い、それぞれが挑んでいるさまざまな取り組みについて議論した。

 困難な環境でも積極的に

エドウィンは、ウサラマというモバイル用アプリを開発した。それは、機能しないケニアの999に対する解決策として、犯罪率の高い地域のユーザーに緊急通報機能を提供するものだ。スマートフォンをシェイクする(振る)と、家族、友人、地域の救援サービスなどに通報者の居場所が伝わり、対応を可能にする。ケニアのモバイル普及率は88%で増加中だ。スマホは4人に1人が持っている。だがエドウィンの望みは、さらにその先をとらえている。「たとえアプリやスマホを持っていない人でも緊急通報を発すれば、それがショートメッセージとして送信されるようにする、というのが私たちの計画です」、と彼は言う。

治安に対する人々の不安に取り組むのは、エドウィンだけではない。工学技術者、ジェームズ・ヴァン・デ・ウェルトの夢は、電気がない南アフリカの地方村落にグリーン・エコノミー[訳注:持続可能な発展を実現するために必要な、環境に優しい経済]を導入することだ。彼が具体的に犯罪に注目するようになったのは、地方村落の学校を訪れた時だった。訪問した12校のうち、11校がソーラーパネルの盗難に遭っていたのである。

彼はヨハネスブルグのことを「世界の犯罪のメッカ」だと言う。そんな町で輸送用コンテナを金属製金庫として使用している業者からヒントを得て、彼は「ソーラー・タートル」という小型移動発電所を考案した。これは、輸送用コンテナ内に電池の入ったリサイクルボトルを置き、それをソーラーパネルで充電するもので、日中はコンテナの外で広げるソーラーパネルを、夜は安全にコンテナ内に格納する。

人々はタートルから電池入りボトルを回収し、それを自宅のシステムにつなげて利用する。 電気がなくなったら充電済の交換用電池を買えばよい。

投資家も地域住民も、犯罪多発地域で機能するイノベーションとして、ウサラマとソーラー・タートルを歓迎した。

 民間市場に賭ける

これら起業家たちの話を聞き、アフリカを席巻する技術革命をたたえるのは容易なことだ。しかし彼らの技術は、投資や支援無しには実現できず、それらを得るのは容易ではないことを誰もが理解している。

多くのアフリカの起業家たちの前に立ちはだかるのが、資金不足、頻発する犯罪、汚職、不安定な政治である。政府による調達(購入)がない場合、多くの発明者たちは自らの社会的イノベーション進めていくために、民間セクターの利用を試みている。

関連記事What will it take to bring electricity to Africa’s poor?(アフリカの貧困層に電気を届けるには何が必要か?)

その好例が、ピーター・ミリアのEコン車いすだ。電気電子廃棄物から作られた彼の発明品は、階段を上り、道路以外の場所も走り、ユーザーを直立させることができ、さらには車いすの機能としては意外なデータ処理ツールにもなる。

その車いすによって、ケニアで障がい者登録をしている150万人が職場に溶け込み、偏見と闘う一助になることを、ピーターは望んでいる。

一方で彼は、Eコン車いすを健常者向けに販売することにも挑戦する。高性能仕様の車いすへの出資者を集め、それを幅広いコミュニティー向けの標準仕様の車いすのコストダウンにつなげようと計画している。

エドウィンも、ウサラマに関して同じような方策をとる。彼のチームは警察や州当局の協力を得ようと働きかけていたが、官僚主義と腐敗に阻まれてからは、警備会社への足がかりを得るため、関係企業と深いつながりのあるケニア警備安全協会(Prosak)と提携した。

エドウィンもピーターのように、やがては貧困層や弱者にも彼のアプリが広がることを期待している。「ひとたび民間の警備会社と手を組めば、政府にその方式の採用を説得する強力な根拠になります」、と彼は言う。

 システムを変える

ケニアの別の有力な候補者に、アレックス・マカリワがいる。大胆なビジョンを持ちながらも語り口は穏やかな青年で、ナイロビの運輸業界において重要な部分を担うトゥクトゥクに革命を起こそうとしている。彼が使用するは、オフグリッド[訳注:電力会社などが電気を供給する送電網から独立している状態]のソーラー充電ステーションのネットワークから動力を得る新型電動車両だ。

「私たちのトゥクトゥクは、日々の使用において、従来のトゥクトゥクよりも運用コストが30~70%安くなることが分かっています。クザ・オートモーティブの基本方針は、持続可能な輸送をもっと使い易くすることです」、とアレックスは述べた。クザにはその電動トゥクトゥクを量産する力はまだないが、需要増加によって販売価格が下がることを期待している。

電動トゥクトゥクの主な課題のひとつが充電時間だ。インフォーマル経済[訳注:定義はさまざまだが、一般的には主に開発途上国で多く見られる経済のことで、政府の管理や規制の影響が少なく公式経済統計にも含まれない露店、行商、廃品回収などから成る経済のことを指す]で働く運転手には、6~8時間の充電時間を待っている余裕がない。アレックスの解決策は簡単だ。「バッテリー切れが近づいたら、残りのバッテリーで数キロ以内にあるカズ充電ステーションまで走り、そこで空になったバッテリーと新しい満タンのバッテリーを交換します」

アレックスは、「アフリカでは電気を得ることが大変大きな問題である」ため、電気を動力源とした輸送手段の大規模な採用については見通しが立っていないことを認める。それでも適切な支援さえあれば、人々は喜んで変化を受け入れるだろうと楽観的だ。

「私たちは、単なる操業したての小さな会社にすぎません。人々の啓発は政府の役割です。政府が持続可能な輸送だけでなく、環境にやさしい技術全般を明確に支援しているところでは、物事は飛躍的に進みました」

 「向上させていくのは私の役目」

彼らの地域社会が直面する喫緊の課題への挑戦について、幻想を抱く候補者はひとりもいない。地域での調達、政府支援、幅広い持続可能な考え方が無ければ、これらイノベーションの多くはとん挫してしまうだろう。

しかしアフリカの若い起業家たちにとって、冷淡な環境や不十分なインフラは、技術的創造力の障壁ではない。

アレックスが、「世の中には先進国と途上国という物差しがあり、人々はそれに従って国を認識する」と端的に言い表しているが、しばしばこれが、リードするグループと後に従っていくグループ、という話を作り上げる。

「しかし私は脳みそを持った人間です。現実に問題のある場所に暮らしているからこそ、私が実際に向上させて解決策を推し進める役を担うのです」

関連特集:2016年5月号メイン記事「人間中心のテクノロジーとは」

工学イノベーション・アフリカ賞は、ロイヤル・アカデミー・オブ・エンジニアリングが創設し、自分たちの地域社会が抱える問題の解決策の開発に向け、サハラ以南のアフリカ諸国のあらゆる分野の技術者の育成を促進する。

アフリカ賞は、アフリカ大陸中から有能な革新的技術者を選び、訓練やアドバイスを行い、素晴らしいアイデアを持つ技術者が起業家として成功するよう支援している。

Africa Prize for Engineering Innovation

by ローレンス・イヴィル

NIブログ記事Meet Africa’s brightest young inventors の翻訳です。

翻訳協力:斉藤孝子



  1. 2017/02/04(土) 00:08:20|
  2. ビジネス・企業

【翻訳記事】課税逃れの偽装ゲーム


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地図をクリックすると本記事の英文ページが開きます。

租税回避はいくつもの対象地が関係する世界的なシステムによって行われており、金融分野での隠蔽と改ざんが何重にも行われる。今回はその対象と、誰が得をして誰が被害を被っているのかを見ていこう。

●米国
米国の資金が海外に流出するのを食い止めるために、米国は自らを最も重要な租税回避地のひとつとして作り上げた。巨大な金融産業は海外資本へ0%課税としており、汚れた資金を磁石のように引きつけてきた。デラウェア州、ワイオミング州、ネバダ州など州法が緩い州では、匿名のペーパーカンパニーの設立は容易である。

●グアテマラ
2013年グアテマラは、資金が違法に海外流出して25億ドル以上を失った。これは、教育分野の公的支出額合計よりも10億ドル以上多い額である。

●パナマ
悪名高い弁護士事務所モサック・フォンセカが拠点を置くパナマは、秘密主義を改めるよう国際社会から圧力を受けるが抵抗し続けている。パナマには現在、35万社の匿名のペーパーカンパニーが登録されており、海外企業は資金を上限なくパナマ国内に移すことができ、税金を払う必要もない。パナマ文書発覚時の改革の試みは、パナマ政府調査委員会のメンバーに就任したノーベル経済学賞受賞の経済学者ジョセフ・スティグリッツが透明性不足に業を煮やして辞任し、機能していない。

●ケイマン諸島
ケイマン諸島は、世界で6番目に大きな金融センターで、その金融資産は1.4兆ドル以上である。11万以上の投資ファンドが拠点を置き、そこには世界のヘッジファンドの半数近くが含まれている。ケイマン諸島の米国の投資額は、中国経済よりも大きいと考えられている。秘密主義に関する法律は非常に厳しく、場合によっては銀行の情報を尋ねるだけで投獄される可能性もある。

●英領バージン諸島
この国の企業登録数は、国民1人あたりに換算すると16社となる[訳注:日本の場合、2015年の商業・法人登記を参考にすると1人あたり0.02社程度]。この小さな海外領土は、世界でも最も簡単に匿名ペーパーカンパニーの登録が可能な国のひとつだ。緩い法律と余計な質問はしない方針の登記法は、実際に利益を得る人々が表面的なダミーを立てて隠れることを容易にする。

●アイルランド
法人税を1桁台に下げる移転価格[訳注:親会社と海外関連会社間の取引価格を操作して、税率の低い国への利益移転を図る]の大胆な形である「ダブル・アイリッシュ」で有名なアイルランド。この国は、アップル、フェイスブック、グーグルといった米国のIT大手のお気に入りである。アップルの低税率をめぐって先日起こった欧州連合(EU)との争いは、法人税回避企業の今後に影響をおよぼす可能性もある。

●ロンドン
ロンドンでは、金持ちの租税回避者たちが資金を隠すために不動産を利用しており、住宅価格が高騰している。市場が好調で固定資産税も低いため、違法な資金を一時的に置いておくには好都合な場所だ。現在平均住宅価格は平均年収の14倍になっている。

●ロンドンのシティ
[訳注:シティは現在金融街として知られるが、古くから商業と金融の中心として役割を担い自治権を有し、現在もロンドン市長とは別に独自の市長がいる。市長は経済・金融に関して独自の外交も行っている。]
王室属領[訳注:英国王室に属するが高度な自治権を持つ地域]と海外領土のネットワークの中心となっている。シティは、世界の大手金融機関の関心事に沿って物事が進むよう後押ししていくことが公式な務めとされている。オフショア[訳注:本国からの規制を受けない海外での金融取引]の世界が活発であり続けるよう「金融の自由」を確保するために、自らが持つ特別な法的特権を使って粘り強いロビー活動を行う。

●ルクセンブルク
ヨーロッパではスイスに次ぐ規模を持つ租税回避地である。緩い金融規制と低い法人税によって、ペプシコやウォルマートといった特に多国籍企業に人気がある。キャピタルゲイン[訳注:土地、債券、株式などの売却益のこと]への税率が低く、配当に対しては非課税であるため、この国はヨーロッパにおける投資ファンド(2兆5,000億ドルという膨大な資産を運用)の中心拠点となっている。

●スイス
改革の圧力にもかかわらず、スイスは依然として金融秘密主義の牙城で、開発途上国からの不正資金のお気に入りの目的地のひとつとなっている。専門家は、2兆3,000億ドル(全オフショア資産の大体3分の1)が、秘密主義のスイスの民間銀行に預けられていると推測している。

●ウガンダ
2010年の税金スキャンダルは、ウガンダの始まったばかりの石油産業を揺るがした。その原因は、英国資本のヘリテージ・オイル・アンド・ガスが、ウガンダの油田を売却した際に4億3,400万ドルの支払いを免れるため、住所をバハマからモーリシャスに移そうとしたためだ。この額はウガンダの1年間の税収の約5分の1に相当するが、長い法廷闘争の末にその一部がようやく支払われた。

●ザンビア
鉱物資源が豊かなザンビアでは、鉱山企業が移転価格スキームを使って税務当局の目をごまかしている。企業の課税逃れにより、ザンビアは年間20億~30億ドルの損失を被っており、それはおよそGDPの10~15%にあたる。国民の74%が1日1.25ドル未満で暮らしているこの国で、その失われた資金があれば、問題を抱える学校と保健医療について政府予算を倍にすることもできたかもしれない。しかしその代わりに、グレンコア[訳注:資源、農業の分野で生産、販売、投資を行うスイスの企業]やベダンタ[訳注:英国の資源会社]、あるいは他の企業の株主のポケットを膨らませることになった。

●ロシア
ロシアの金融資産の半分以上にあたる約2,000億ドルが海外に隠匿されているため、年間10億ドルの税収を得ることができない。租税回避は、特に政治エリートの間でよく行われている。プーチン大統領を含む政府高官の親類や知り合いたちは、オフショアの熱心な利用者である。

●中国
オフショアの対象国としては世界最大規模で、2001年から少なくとも1兆ドルの資金が違法に国外に流出している。これは、習近平国家主席の親類を含む国のエリートたちが、中国税務当局の目の届かないところに資産を移しているためだ。

●香港
自国の税務当局の目を逃れたいアジア資本の集積地として急成長している香港は、厳格な秘密主義の法律と金融規制には無干渉主義で通すという2つの特徴が相まって、汚れたカネを引きつけてきた。香港は、中国本土からの汚れたカネを、外国資本として装って再度中国本土に投資する「ラウンドトリッピング」という手法で知られている。


2016年12月号NI498p24-25「The dissimulation game」の翻訳です。c498-100.jpg





  1. 2016/12/30(金) 02:10:34|
  2. ビジネス・企業

【翻訳記事】クリスマスプレゼントと世界の工場とスウェトショップ(搾取労働)


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2014年7月にサンフランシスコで行われたアップルに対する抗議デモ。プラカードには「DeathPad(死のパッド)」や「中国からサンフランシスコ湾まで、きちんとした仕事をすべての人に」といった訴えが書かれている。
Annette BernhardtCC BY-SA 2.0


クリスマスプレゼントを昼夜働いて作っているのは、サンタクロースの小さな妖精たちではない。それは、わずかな賃金で働く中国人労働者たちだ。アモーグ・ウカエフが報告する。

クリスマスのテレビCM。それは、電子機器、衣類、おもちゃなどの商品を買いたくなるよう視聴者の購買意欲をそそる。

クリスマスには3つの特徴がある。広告と商業主義、買い物と消費、そして西側経済へのより多くのカネの流入だ。2015年、英国の小売業界のクリスマスシーズンの売上は、240億ポンド(約300億ドル)を超えた。これは、ネパールやホンジュラスの国内総生産(GDP)を上回る。この熱狂的な消費は、私たちの購買意欲を増進する広告、マスコミ、ソーシャルメディアの影響だ。

米国では、「ブラックフライデー」や「サイバーマンデー」といった特別なセールの日が作られている。現在それはヨーロッパにも広がった。クリスマス前とクリスマスから新年にかけては、1年でも最も消費が高まる時期になっている。

昨年のセールの週末には、英国人は33億ポンド(41億6,000万ドル)の買い物をした。多くの人々がオンラインショッピングを利用し、サイバーマンデーには、9億6,800万ポンドという途方もない金額が使われた。そして小売業大手(Argos、Tesco、John Lewis)のウェブサイトは、容量を超えてダウンしてしまった。また運輸会社は、オンライン注文された品物の配達を、全部は受け付けられなかった。

 現実世界の妖精たち

サンタクロースの工房で楽しそうに働く小さな妖精たちを思い浮かべてみる。そのイメージは、工場で働く労働者の状況とかけ離れている。世界のおもちゃの80%は中国で作られており、一般に普及しているおもちゃのほとんど全部に「中国製」と記されている。西側諸国の街中でクリスマスソングが流れるずっと前から、その「小さな妖精たち」(彼らは現実世界の中国人労働者だ)は、たくさんの商品を作るために日夜働いている。

中国の玩具工場は、年間28億ポンド(35億3,000万ドル)の玩具を英国に販売している。しかし大手ブランド(例えばレゴやディズニーなど)は、英国内の小売価格に比べるとわずかな代金を工場に支払っているにすぎない。また、おもちゃの価格には、社会的、環境的なコストは含まれておらず、この状況は搾取である。

しかしスウェットショップ[訳注:低賃金、劣悪な労働環境・条件で労働者を働かせて搾取する職場や労働のこと]はおもちゃだけではない。電子機器や衣類でも同様だ。多くの人々がアップル、アマゾン、サムスンのガジェット[訳注:興味をそそられる小型電子機器]を欲しがる。しかしこれらの企業は、ナイキやトップショップ[訳注:英国のファストファッション企業]といった他の有名ブランド同様に、労働者の権利を(サプライチェーン[訳注:製品の原材料からそれが消費者に届くまでの一連の過程]のどこかで)ないがしろにしている。サムスンは、労働者に有毒な化学物質を使用させたり、労働組合を結成しない契約をアジアでは結んでいたとして非難を浴びていた。アップルは、自殺者を出すほどの厳しい職場や労働環境に対して非難を浴びていた。バッテリーを内蔵する機器の50%以上が、コンゴ民主共和国の「紛争鉱物」(コルタン等の鉱物は紛争の資金源となっている)を使用している。

労働者の扱いはひどいものだ。危険な職場環境の中、超低賃金で長時間働かされ、言葉だけでなくしばしば身体的、性的な暴力も受け、基本的人権が守られていない。

世界の多数の工場労働者は、クリスマス商戦に十分な商品を供給できるよう、非常に辛くうんざりするような毎日を送っているのだ。

 行動しよう

クリスマスの時期にもっと買い物をすることは、スウェットショップ労働者を増やすことになる。しかし、購入者に責任を負わせることは誤りだ。そのような商品を購入する多くの人々は、長年給与が上がっていないのかもしれず、金銭的な余裕がなく、安い商品を選ばざるを得ないのだ。Fairphone[訳注:紛争資源を使用せず、スウェトショップでない工場で生産したスマートフォン。また、それを開発、販売しているオランダの社会的企業の名称。]のような商品は高価で、ノートPCでもデスクトップPCでも、パソコンでは「フェア(公正)」な選択肢は存在しない。

スウェトショップは、工場で働く女性により力を与えると言う人もいる。あるいは、貧しい人々に賃金を与えるこができると言う人もいる。しかし場所によっては、スウェトショップでの労働は奴隷労働のようなものなのだ。もしそこに搾取があるのであれば、そこから利益を上げるのは間違っている。

しかし、もし私たちが「地元製を買う」だけにしたら、南の国々の労働者を支援することはできないだろう。多くの労働者たちがスウェトショップで働くのは、他に収入を得る選択肢がないからである。

この問題に取り組む最善の方法のひとつは、労働者を組合に加入させることだ。そうすれば、彼らはより良い賃金と労働環境を求めて闘うことができる。そんなことをすれば工場はつぶれてしまうと言う人がいるが、それは真実ではない。

バングラデシュが好例だ。バングラデシュでは、2013年のラナプラザビルの崩壊で1,000人以上の労働者が死亡したが、その後20カ国以上の多くの衣料品企業(例えばアディダスやプライマーク[訳注:英国のファストファッション企業])が「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関する協定」に署名した。この協定に基づき、現在は1,592の工場が立ち入り検査を受けている。

バングラデシュの最低賃金は、依然として世界最低であるが、それも1カ月38ドルから68ドルに大幅に上昇した。その理由は、抗議活動と労働者が不満を訴えたからだった。

このように、バングラデシュの工場は現在もつぶれずに稼働している。世界では現在、もっと多くの労働者が、より良い賃金と条件のために闘い、仕事を失うか、または警察から弾圧されるかというリスクを負っている。

だが、搾取労働は依然として存在する。私たちは連帯を示す必要がある。1911年、トライアングル・シャツウエスト工場で火災が起こった。このニューヨーク市の工場火災では146人の労働者が死亡した(ニューヨークと米国の労働者は、この火災の後に基本的な権利と保護を手に入れた)。それから100年たつが、私たちは依然として南の国々の人々への同じ基本的な権利と保護を求めて闘っており、このような状況は受け入れがたい。

搾取労働を違法とする法律は現在効果的ではなく、無視されてしまうことも多々ある。労働者の権利の獲得を保証するための政策と法律は不十分で、政府は世界人権宣言を具現化する努力を怠っている。それは、工場を持つ国の政府、製品を買う国の政府どちらもである。従って、この問題に関しては政府にも企業にも責任がある。グローバルな義務は、世界で最もぜい弱な人々の人権の擁護に失敗している。

搾取労働をなくすことは難しいが、それは可能だ。私たちに必要なのは、世界そして各国においても、労働者、企業、政府、消費者などすべての段階で変化を求めることだ。

私たちがMaquila Solidarity Network、Worker Rights Consortium、Electronics Watch、SweatFree Communitiesなどの団体を支援すれば、その団体は、私たちのクリスマスプレゼントが確実にスウェトショップ製でなくなるよう闘っている人々を支援できる。

by アモーグ・ウカエフ

The dark side of Christmas: sweatshops By Amoge Ukaegbuのシンプル英語版(Easier English)の翻訳です

※シンプル英語版はシンプルな英文にするために、単語、文章構造、引用が変更されている場合があります。シンプル英語版の翻訳と英文で概要をつかんだら、今度はオリジナルの英文を読んでみましょう。


  1. 2016/12/23(金) 20:54:56|
  2. ビジネス・企業

【翻訳記事】 ラナプラザの教訓


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ラナプラザ崩壊の現場
Photo: rijansCC BY-SA 2.0



3年前にダッカの縫製工場のビルが崩壊した時、国際的な抗議の声がわき起こり、労働環境の真実が暴かれた。この出来事は、バングラデシュの労働組合と労働者に何らかの変化をもたらしたのだろうか? トゥルシ・ナラヤナサミーが報告する。


「私たちはもう我慢できません」。こう言うのは、バングラデシュの首都ダッカの縫製工場で働くリーリだ。「私たちはみな、ラナプラザ前と後の生活について話題にします」。抗議集会が行われている場所を通りかかった時、ストライキによって労働者が工場閉鎖後の補償を受けられるようになったことを知って驚いたリーリは、バングラデシュ衣料品産業労働組合連合(NGWF)に加入した。彼女は職場近くのスラムに住むが、息子と家族は離れた地方に住んでおり、会えるのはたった年1回。彼女は給料の大半を仕送りにあてる。

ラナプラザ工場が崩壊したのは2013年4月。1,130人が死亡し2,500人が負傷した。リーリのような女性にとって、それはその後の人生を方向付ける決定的な出来事となった。縫製産業は搾取の上に成り立っているが、ラナプラザ崩壊とその後のメディアの報道によって、労働者たちはそのことを非常に強く意識させられた。労働者たちは組織を作り世界的なファッションブランドに対して反撃を開始。だがブランド側は、服のデザインから縫い目ひとつにまで意向を押しつけてくるにもかかわらず、労働者の基本的人権を確実に工場に守らせるようにするほどの力はないと主張した。

職場である工場に本当の変化をもたらすのは、ファッションブランド企業や政府ではなく、労働者自身であることを理解している縫製工場労働者たちにとって、最大の懸念は労働組合結成の権利である。将来再びラナプラザの事故が起こることを防ぐには、それ以外の道がないことを彼らは分かっている。例えば今年初め、ダッカの縫製工場が火事になったが、もし火災発生が1時間遅かったら、工場は6,000人の労働者で一杯になっており、避難することはできなかったかもしれない。

ラナプラザの事故の後、待ち望まれていた「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関する協定」がわずか1週間で調印された。これは、工場の状態に関して、ファッション業界が初めて直接的な責任を認めるものとなった。しかし、法的拘束力をともなうこの協定も、その成否にかかわらず2018年末までとなっている。その成功の鍵は、工場を安全な場所にするために必要な改善を、今後2年間でブランド企業に約束させられるかどうかにかかっている。労働者たちは期待はしていない。彼らは、労働環境を向上させることができるのは、組織的に団結する以外にはないと力説する。ラナプラザが崩壊した日、そこで働いていた労働者たちは、壁に亀裂が走っているのを目撃してあわてて外に逃げ出した。しかし、戻って働くように命令されたのだ。個人では拒否するにもわずかな力しかなかったが、労働組合を結成していれば上司の命令に抵抗することができたかもしれない。工場に戻った労働者たちは、その1時間後にがれきの下敷きとなった。

2013年7月、バングラデシュは労働法を改正した。それは、労働組合の結成をかなり容易にするものだったが、労働組合の公的な承認と登録に必要な工場労働者の加入割合(組織率)は30%以上という要件は残された。労働組合結成への動きに対しては、労働者たちへの威圧と脅迫が広く行われるため、この30%という割合は非常に厳しいものである。特に大きな工場では、1,000人を優に超える労働者の加入が必要で、困難を極めた。また、職場で労働組合を結成しようとする労働者の契約解除は日常茶飯事だった。

だが、過去3年で新たな労働組合が結成され、組合員数の増加も堅調だった。とはいえ、労働者の組合組織率はたった5%である。やはり、各地の労働組合が多くの労力を費やしていたのは、解雇された労働者の復職を求めた交渉であった。目の前にある残業の強制、賃金未払い、不衛生な飲料水、生産目標達成への過度の圧力といった問題よりも、組合のリーダーたちを守る活動に力を注ぐこともしばしばだった。

大きなリスクを伴う闘い

各工場の職場の組合代表のほとんどは女性だが、労働組合の代表者たちはほとんどが男性である。バングラデシュの縫製工場で働く労働者の85%は女性であり、この点から代表性の不均衡と代表者不足は問題を引き起こしている。つまり労働組合の問題が、女性の権利というよりも一般的な労働者の権利という視点でとらえられているのだ。女性は、労働環境から圧倒的な影響を受けているが、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)だけでなく、職場で雇用主から男性とは別の扱いを受けるという問題もある。「難しい業務を任されるのはいつも女性たちです」、とある女性は説明する。「男性たちは梱包作業で私たちよりずっと高い給料をもらっています。でも、私たちも懸命に働いているのです」

女性リーダーの必要性は、現在多くの組合の検討事項に含まれている。だがバングラデシュでは、父権社会という広く刻み込まれた文化に挑む必要があり、その変化は遅い。その対応としては、ジェンダーに対する意識向上や女性のリーダーシップに関するトレーニングから、重要な代表的地位(書記長や代表など)を女性に限定する労働組合の規則の改正までさまざまである。

これは、「女性のエンパワメント」ということではない。この言葉は、女性たち自身からパワーがわき起こるのではなく、女性たちにパワーを与えることを意味する。しかし現実は、危険を伴いながらも女性たちが自身の権利のために積極的に闘っているのだ。労働組合で中心となる女性、組合に加入する女性に対して工場所有者は、常套手段としてギャングを使っての暴行、殺害脅迫、性的な嫌がらせを行う。労働組合に加盟している女性の縫製工場労働者で、暴言を浴びたり、身体的あるいは性的な暴行を受けたことがない人を探すのは難しいくらいだ。このような侮辱や虐待があまりにも一般化しており、女性たちはそれを困難な闘いに伴うリスクの一部として受け入れているほどである。

これからの挑戦

世界はラナプラザの後、自分たちの衣服を作る工場の恐ろしい労働環境と世界的ファッションブランドとの関係に気づいた。しかしファッションブランド企業は、新たな工場崩壊の防止には労働組合結成が最善策であるにもかかわらず、組合結成の権利の否定に相変わらず大いに加担している。企業は、自社のサプライチェーンに含まれる工場の詳細について公開を拒否しているが、それは結局地域の労働組合が労働環境を調査し、その情報を企業と顧客への働きかけに活用することを妨げているのだ。H&Mやマークス&スペンサーなど、ほんの一握りの企業がサプライチェーンの情報を公開している。ただ、各工場での生産量は公開されていない。このことにより、工場で権利侵害が発覚した場合でも、ファッションブランドは常套句のように言う。その工場での総生産量に占める当社の生産量は少ないため、労働条件改善への当社の影響力は限定的なものだ、と。

組織化を進めようとする女性の縫製工場労働者が直面する、これまで見てきたような困難に加え、いわゆる「黄色組合」[訳注:急進的な赤色労働組合とは異なる企業に協調的、従順な組合のことで、御用組合、企業組合などとも呼ばれる]の存在が彼女たちの状況を一層困難なものにする。黄色組合は、工場が結成したり政党と関係したりしている組合で、労働者が権利のために闘うのを積極的に妨げることで、労働者自身の独立した代表制のある組合結成を不可能にする。偽って労働者を代表し、労働者たちが集団的な行動を起こすのを説得して止めさせ、労働者を真に代表する組合結成の可能性に気づかせないようにするのだ。

国際的な労働組合組織、例えばインダストリオールは、どのような組合が加盟しているのかもっと見定める必要がある。もし国際的組織が黄色組合の加盟を許せば、労働者を支援するという独立した労働組合の大いなる努力は台無しになる。ある労働組合員は、「黄色組合を正当化することで、国際的組織は各国の労働運動を汚すことになる」と説明した。最終的に労働者は、堕落した組合の悪評を知らしめる必要がある。

NGWFで辛抱強く女性の権利のために取り組むアリアは、連帯の必要性を強調した。「一緒に働き一緒に闘うことができなければ、組合の意味はありません」と彼女は言う。労働者にとって、組合を活用し組合が提供する支援や研修を受ける必要性は、非常に高い。自らの労働組合を通じて団結し、組織化され、研修を受けた繊維工場の労働者たちは、頼れる勢力になるかもしれない。いや、なるはずだ。◆

by トゥルシ・ナラヤナサミー
英国のNGO「ワー・オン・ウォント」のアジア太平洋担当の国際プログラム・シニアオフィサー。
http://www.waronwant.org


2016年9月号NI495p24-25「Out of the ashes of Rana Plaza」の翻訳です。c495-100.jpg



  1. 2016/10/05(水) 01:49:27|
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