NIジャパンブログ

【翻訳記事】外国NGO法は何を狙うのか(中国)


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Lain(CC BY-NC-ND 2.0
北京の地下鉄の駅。誰にとって平安(平安、平穏、無事の意)な里(ふるさと、近隣の意)なのか?(写真は記事とは直接関係はありません)


中国国内で活動する外国NGOを対象とし、その内容から議論を呼んでいる新たな法律が中国で可決された。

2017年から施行されることになったこの法律は、外国NGOの活動を「規制し導くこと」をうたっている。これまで国際的なNGOは、法的にグレーだった部分において比較的自由に活動できていた。しかし新たな法律の下では、公安省の詮索のまなざしにさらされるようになる。また中国の警察は、「噂の拡散」など曖昧な容疑でもNGOスタッフを合法的に拘束できるようになる。

中国の草の根NGOの代表は匿名を条件に、「中国当局は、『色の革命』(旧ソビエト連邦のいくつかの共和国で起こった平和的な蜂起を指す)の思想を心配しています」と説明する。「政府は外国NGOを常に疑っています。この法律が施行されれば、外国NGOにとってはかつてないほどの衝撃となるでしょう」。多くの人々は、この動きが中国自身の市民社会グループ(その多くが海外からの支援に依存する)に対してさらなる萎縮効果をもたらすことを恐れている。それは、この動きが最近起こった習近平国家主席による人権弁護士など他の批判勢力の弾圧に続くものだからだ。

またこれは、NGOが政治分野に口を出す機会を奪う試みが世界中で行われているというより大きなトレンドを反映したものである。各国政府は、NGOの登録、運営、資金提供を規制するため、2012年1月以降100を超える法律を提出または制定してきた。市民団体への資金援助や支援を行う資金提供者らによって発足した団体「市民社会資金提供者イニシアチブ(Funders’ Initiative for Civil Society)」が出した最近の報告によれば、このような政府にはロシアやベラルーシなど専制的な国だけでなく、民主主義が活発なインドやケニアも含まれている。

この不安は資金提供者たちだけが感じているものではない。英国王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)の最近の報告の中で触れられているが、昨年パリで合意にこぎつけた国連気候変動枠組み条約は、その結果を効果的に実行し、その大きな希望を将来着実に進めるためには、世界の市民社会からの大きな後押しを必要としている。世界最大の炭素排出国である中国にとって、それはまさに最大の関心事なのだ。◆

 サム・ジオール


2016年7/8月合併号NI494p9「Activist alarm at foreign NGO law(China)」の翻訳です。c494-100.jpg


  1. 2016/07/29(金) 13:38:22|
  2. 市民・ムーブメント

【翻訳記事】身近な監視とプライバシー


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csaila (CC BY-NC-SA 2.0)


私たちを奴隷のように扱う監視ビジネスの秘密を、ブルース・シュナイアーが暴く。

毎朝携帯電話をポケットに入れて出かけることによって、あなたは暗黙のうちに携帯電話会社に有利な取引を行っている。「私は携帯電話で電話をかけたり受けたりしたい。その代わりに、その携帯電話会社が私の居所を常に把握することを許可する」

この取引は、契約書のどこにも書かれてはいない。しかし、携帯電話システムの仕組みとしてもとから備わっているものである。

これは、非常に身近な監視だ。携帯電話を通じて、あなたの自宅や職場がどこにあるのかも分かる。あなたがいる区域内の他の携帯電話をすべて把握できるため、あなたが一日を誰と過ごし、誰とランチに行き、誰と夜を過ごしたのかも分かる。

蓄積されたデータは、あなたがどのように過ごしていたかをあなたよりももっと詳しく描き出すことができるだろう。2012年研究者らは、この種のデータを使って人々が24時間後にいると思われる場所を20メートルの範囲に絞り込んで推測した。

あなたの位置情報には価値があり、あなたをリアルタイムで追いかけることに懸命な産業が存在する。企業は携帯電話を通じて店の中であなたを追いかけ、どんな買い物をしているのかを知り、街中での動きを追って特定の店にどの程度近づくのかその可能性を判断し、現在いる場所をもとにショッピングの広告をあなたの携帯電話に送信する。あなたの位置情報はとても価値があり、今では携帯電話会社はその情報をデータ仲介会社に販売する。そのデータ仲介会社は、カネを払ってくれる相手であれば誰にでもそのデータを販売する。センス・ネットワークスのような企業は、このようなデータを使ってひとりひとりの個人プロファイルを作ることを専門的に行っている。

米国のベリントは、世界中の企業や政府に電話追跡システムを販売する。同社のウェブサイトには、ベリントは「カスタマーエンゲージメント最適化、セキュリティ・インテリジェンス、不正、リスク、コンプライアンスのためのアクショナブル・インテリジェンス・ソリューションで世界をリードする企業です。180カ国以上、1万を超える組織が当社の顧客です」とある。

コバムは、電話を鳴らさず探知もできない「ブラインド」[訳注:不明、匿名の意]な電話をかけることが可能なシステムを販売している。このブラインド・コールは、電話機に特定の周波数の電波を出させ、コールした方はそれによってその電話の場所を1メートルの範囲に絞り込んで探知できる。この英企業は、顧客にアルジェリア、ブルネイ、ガーナ、パキスタン、サウジアラビア、シンガポール、米国の政府がいることを誇りにしている。

パナマに登記しているディフェンテックは、「世界のいかなる電話番号であっても、その電話番号の相手だけでなく、ネットワークと携帯電話会社にも気づかれずにその居場所を突き止めて追跡すること」が可能なシステムを販売する。

 封建制度のような関係

携帯電話の位置情報だけではない。コンピューターが私たちのあらゆる行動と深く統合されていることや、コンピューターの記憶装置の価格が非常に安くなっており、私たちが生み出す全データを制限なく保存するのも夢ではなくなってきていることに気づいている人はほとんどいない。

私たちが生み出すデータは、すべて監視に使われている。それは自動的に、しかもほとんど目に見えない隠された形で行われている。監視データは、たいていの場合は私たちが顧客やユーザーとしてかかわる企業によって集められている。2012年ニューヨークタイムズ紙は、広告で優位に立つために企業がいかにして私たちのデータを分析しているのかを記事にした。その中には、ミネアポリスに暮らす男性に関する逸話が含まれていた。それによればある男性は、自分の10代の娘にターゲットという企業のネットショップからベビー用品のクーポンが送られてきたとして同社に抗議した。しかし、ターゲットのそのクーポンは、必要とする人に正しく送られていたことが後に分かったというものだ。

もしも誰が追跡しているのかを確認したければ、LightebeamやDoNotTrackMe[訳注:現在はBlur]などのプラグイン[訳注:付加プログラム]をインターネット閲覧時に使うブラウザにインストールしてみるとよい。これらのプラグインを使えばクッキー[訳注:各ウェブサイトを訪問した時にその情報をパソコン内に保存しておくファイル]を監視することができる。あなたがその結果に驚がくすることは間違いない。ある人が報告しているが、彼の場合は36時間で105の異なる企業が彼のインターネットの使用を追跡していたことを発見した。*

監視は、人々が主に「無料」と「便利」という2つの点を好むため、インターネットにおけるビジネスモデルとなっている。「無料」は特別な価格であり、それに対して人々は理性的な対応ができない。そして無料よって私たちの利益と代価に関する感覚はゆがめられ、個人情報をその価値以下でやり取りすることになってしまう。もし無料のものを使うのであれば、あなたは顧客ではなく製品となる。

私たちが依存する多くのインターネット企業と私たちの関係は、これまでの企業と顧客の関係とは異なる。私たちは、これらの企業が真の顧客に販売する製品のようなものなのだ。封建制度で例えると、企業は領主のような地位におり、私たちは彼らの小作人である。そして私たちは、領主が売って利益を得るデータを生産しているのである。

 スパイ国家

政府は、テロリストや犯罪者を見つけるために、また政府にもよるが、政治活動家や環境活動家、消費者運動家、思想や宗教に独自の考えを持つ人々を見つけるために、すべての国民をひそかに探りたいと考えている。

企業と政府の監視は結びついており、世界に広がる政府と企業の監視パートナーシップによって支えあっている。これには公式な合意があるわけではなく、お互いの関心が重なる部分で協力関係にあるというのが現状に合った言い方になる。

米国の国家安全保障局(NSA)の監視に関してエドワード・スノーデンが暴露したことにより、この政府と企業の監視パートナーシップには不協和音が生じたが、依然として両者の結びつきは強い。NSAは、関心を寄せている多数の個人の情報を提供するようマイクロソフト、グーグル、アップル、ヤフーなどのインターネット企業に合法的な圧力をかける。これらのネット企業は、データを提供するようしばしば裁判所命令を受けるが、その命令はほとんど秘密裏に出される。また別の手段としてNSAは、これらの企業の許可無しにそのシステムへのハッキング(侵入)も行ってきた。

英国の情報機関である政府情報通信本部(GCHQ)は、世界中の大半の通信にアクセスできるようブリティッシュ・テレコム(BT)やボーダフォンなどの企業に料金を支払っている。ボーダフォンは、アルバニア、エジプト、ハンガリー、アイルランド、カタールなどおそらく計29カ国に対し、各国国内につながるインターネット通信基盤を提供している。

イタリアのサイバー兵器製造企業であるハッキング・チームは、コンピューターとスマートフォンのオペレーティングシステム[訳注:Windows、iOS、Androidのような基本ソフトのこと]に使用できるハッキングシステムを世界中の政府に販売している。その顧客には、アゼルバイジャン、コロンビア、エジプト、サウジアラビア、トルコ、モロッコといった政府が含まれる。

レイセオン、ノースロップグラマン、ハリス・コーポレーションなどの米国防衛大手企業のほとんどは、米軍用にサイバー兵器を開発している。シリアはドイツのシーメンス、リビアのカダフィ政権は中国のZTE、サウジアラビアは南アフリカのVASTechを採用した。

政府による政治的、法的な直接支配が及ばない企業の製品に対して、政府が秘密裏に「バックドア」[訳注:裏口、勝手口という意味で、システムへの正式なアクセスルートではない秘密の侵入口のこと]を仕掛けているかどうか私たちには分からない。しかし、多くのコンピューターセキュリティの専門家は、それは現実に行われていることだと考えている。

2013年に開催されたあるテクノロジーの会合においてグーグルのエリック・シュミットCEOは、参加者を安心させようと次のように述べた。「現在グーグル内の情報は、いかなる政府の詮索好きなまなざしからも安全であると強く確信しています」

より正確な言い方をすれば、発言は次のようなものになったであろう。「あなたのデータはいかなる政府からも安全です。ただし、当社には分からない場合と、当社があなたに言えない場合を除いてです」。また、シュミットが言わなかった別のこともある。「もちろん、当社はすべてのデータに完全にアクセスすることができます。誰であれ当社が望む相手にデータを売却することが可能です・・・・・・あなたがその代償を求めることはできません」

 プライバシーはなぜ重要なのか

旧東ドイツのシュタージ(国家秘密警察)やアルゼンチンの独裁者アウグスト・ピノチェトからグーグルのエリック・シュミットまで、監視を擁護する人々は、「隠し事がなければ何も恐れることはない」という古い格言を決まったように持ち出してくる。

これは、プライバシーの価値を危ういほどに狭めた考え方である。プライバシーは、人間にとって不可欠な要求で、私たちが世界とどう関係していくのかをコントロールするために、私たちの能力の中心に位置づけられたものである。プライバシーを丸裸にすることは、根本的に人間性を奪うことにほかならない。また、監視を行っているのが私服警官であれコンピューターのソフトウエアであれ、どちらでも同じことだ。

政府による大規模な監視は、テロから国民を守るといった安全上のメリットがあると言われる。しかし、大規模監視によって本当にテロ防止に成功したかどうかはこれまで実証されていないし、大規模監視による害についてはかなりの証拠が挙がっている。監視がいたる所に存在する大規模監視は、インターネットの安全性を低いままにしておくことになり、それによって敵対する政府、犯罪者、ハッカーに対する安全性を低下させてしまう。

私たちは、政府と企業の監視から自分自身を守る必要があり、新たなテクノロジーとどう付き合っていくのかについては、一歩先をゆく行動をとる必要がある

その治療方法は、その病根同様複雑だ。対処するには、プライバシーへの評価と監視に対する私たちの認識を転換させる必要がある。なぜなら、社会がその要求を始めなければ、本格的な法律改革を成し遂げることはできないからである。

今のところ、プライバシーは恐怖に打ち負かされており、テロに対する恐怖が独裁政治に対する恐怖を打ち負かしている状況にあるのだ。◆

本稿は、ブルース・シュナイアー著『Data and Goliath: The Hidden Battles to Collect Your Data and Control Your World』(Norton/2015)からの抜粋。ブルース・シュナイアーは、セキュリティー技術の専門家で、ハーバード大学ケネディ行政大学院のフェロー務める。彼のウェブサイトはこちら。
https://www.schneier.com

*あなたを追跡する企業のほとんどは、Rubicon Project、AdSomar、Quantcast、Plus 260、Undertone、Traffic Marketplaceなど全く聞いたことがないものかもしれない。

[参考]
2010年に米国ペンシルバニア州立大学で行われたTEDでのブルース・シュナイアーのプレゼン「セキュリティの幻想」の動画。
https://www.ted.com/talks/bruce_schneier?language=ja


2016年7/8月合併号NI494 p16-17「I spy with my little algorithm…」の翻訳です。c494-100.jpg

  1. 2016/07/28(木) 00:37:16|
  2. 暴力・平和・人権

【PDF版】2016年6月号「エボラ後のシエラレオネ」Keynote(メイン記事)をアップ


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1976年に発見されたエボラ出血熱。2013年までに20回以上の流行が起こりましたが、そのいずれもが3カ月以内に終息しました。

しかし、2014年から2015年にかけてシエラレオネ、ギニア、リベリアで起こった流行はこれまでとは次元の違うものでした。

特にシエラレオネでは1万4,000人以上が感染し、そのうち4,000人弱の人々が命を落としました。そして回復して生き延びた人々の中には後遺症に悩む人も少なくなく、また社会もエボラの流行によって大きなダメージを受けました。

今回なぜこれほどの流行になってしまったのか? 感染が拡大する前にもっと早く封じ込めることはできなかったのか? 人々はどのように生き延び、今どんな生活を送り、次の万が一の出来事にどう備えているのか?

今号は、NIの共同編集長のヘーゼル・ヒーリーがシエラレオネを訪れ、現地の市民リポーターの協力を得て制作しました。市民リポーターは、現地市民の情報発信活動を支援する英国のNGO「On Our Radar」にトレーニングを受けた人々です。

今回人々の事細かな体験と感情を誌上で紹介できているのは、市民リポーターの活躍のおかげです。Keynoteでもその一部を紹介しています。

Keynoteの英語版は、こちらのNIのウェブサイトで読むことができます。


※2016年6月号NI493 c493-100.jpg




  1. 2016/07/18(月) 21:07:32|
  2. 健康・食・農業

【翻訳記事】石炭の王様の退場


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カナダのアルバータ州にあるシンクルード社のターサンド採掘・精製所
jasonwoodhead23 (CC BY 2.0)


長い間環境キャンペーンのターゲットとなってきたロイヤルバンク・オブ・スコットランド(以前は石炭への世界最大の資金提供者のひとつだった)が、ついにターサンド[訳注]と石炭から投資を引き揚げ、代わりにグリーン・エネルギー企業への投資を倍増することになった。このニュースが飛び込んできたのは、世界の石炭最大手であったピーボディが破産して会社更生手続きが申請されたのと同じ週であった。◆

[訳注:ターサンドはオイルサンドとも呼ばれる油分を含んだ砂れきのこと。油分を分離して重質油を取り出すが、その採掘と分離の際に大量の水とエネルギーが必要となり、深刻な環境汚染ももたらす。 関連特集「ストップ! オイルサンド」]


2016年6月号NI493 p9「King coal deposed」の翻訳です。c493-100.jpg



  1. 2016/07/01(金) 07:35:06|
  2. ビジネス・企業