NIジャパンブログ

【翻訳記事】鉱山開発による土地収奪と闘う人々(ビルマ)


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レパダウンの村人に立ち退きを迫る警察(その他の写真は下の名前部分をクリック)
Han Win Aung/Burma Partnership (CC BY-NC 2.0)


ビルマミャンマー)では、急速な経済発展と増加する外国資本の鉱山事業によって多くの農民が影響を受けている。トウェ・トウェ・ウィンは、そんなビルマの農民のひとりだ。2012年彼女の村では、中国の鉱山企業が行う事業に関する説明会があり、村人たちは当局から呼び出されて学校に集まった。当局側は、レパダウン鉱山開発のために収用された土地には市場価格以上の補償を行うことを約束し、鉱山の廃棄物を地元の農地に廃棄することはないと言った。

4年後、数百人の村人たちが強制立ち退きに遭っている。また、鉱山のために化学物質を製造する酸化物プラントが、村人十数世帯の家から50メートルあまりのところに姿を現した。平和に行われた鉱山反対の抗議活動に対し、警察は白リン弾[訳注]を使用し、150人を超える僧侶と村人たちが一生残る傷を負った。2016年に現地調査を行った人権団体「フロント・ライン・ディフェンダー」は、体の50%を超える部分に化学やけどの傷跡が残る複数の生存者に面会した。

トウェ・トウェは現在、鉱山企業と警察の過度な対応に抗議している。彼女によれば、警察はコミュニティーよりも鉱山を守っているという。だが抗議を行った結果、彼女は脅迫や嫌がらせを受け、逮捕されてしまった。しばしば国際的なニュースとして、ビルマ新政府が著名な人権活動家を首都ラングーン(ヤンゴン)の刑務所から釈放したことが報道されるが、地方の草の根活動家に対する弾圧が報道されることはほとんどない。

ビルマの指導者であるアウン・サン・スーチーは、政府の国内農業地域軽視という姿勢に沿った外交的対応を行っている。この8月スーチは北京を訪問し、中国がビルマに建設する34億ドルに上る水力発電ダム建設プロジェクトの交渉を再開させた。このダムは、環境破壊に対する抗議が拡大したため2011年に頓挫したプロジェクトだった。

国際的には、大半の人々はビルマの和平プロセスの行方に注目しており、数百万人が影響を受けている土地の権利の侵害は無視されている。EU(欧州連合)は和平プロセスに1億ドル以上を投入しているが、人権擁護活動家は、欧州のリーダーたちは民主化へのプロセスに含まれていない地方コミュニティーの支援に失敗している、と述べる。欧州委員会は6月のプレスリリースで、「土地の権利の強化[と]、土地の収用がもたらす不公正な苦しみにどう対応するのかが、新政府の正当性にとって非常に重要となる」と認めているが、この侵害を終わらせる計画案については触れていない。◆

by エリン・キルブライド(フロント・ライン・ディフェンダー)
https://www.frontlinedefenders.org

訳注:白リン弾は、煙幕の発生や焼夷弾として戦闘で使われるが、警察がデモの鎮圧に使うことはほとんどない。負傷者たちは、高温になる白リンによってやけどを負った。


2016年10月号NI496p6「Land defenders step up(BURMA)」の翻訳です。c496-100.jpg




  1. 2016/10/31(月) 23:21:46|
  2. 環境・資源

【翻訳記事】PISA狂騒曲とピアソン社が描く学校教育

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ccarlsteadCC BY 2.0
(写真は記事とは直接関係はありません)



国際的な学力テストと教育民営化は、どのように連携しながら進んでいるのか。アダム・アンウィンとジョン・ヤンデルが報告する。

新自由主義が描く教育の将来にとって、テストの点数は重要である。それによって基準を示すことが可能になり、新自由主義システム内での説明責任[訳注*]を果たせるようになる。テストの点数で示される結果が頼れるものなのであれば、生徒同士、クラス同士、学校同士、国同士の比較が容易になる。現在、テストに基づいた説明責任へ寄せられる関心はまさに世界的な現象となっており、地域や国レベルでの教育の優先順位と教育政策を方向付けるようになってきている。
[訳注*:本稿ではこの責任について、学校や地域ごとの成績やテストの目標設定と報告に対する責任に加え、学校の生産性(投入予算と生徒の成績)に対する説明責任についても含まれたニュアンスで使用されている]

2000年以来、OECD(経済協力開発機構)が行う定期的なテスト、PISA生徒の学習到達度調査)に参加する国はますます増えている。この、読解、数学、科学の分野が含まれるテストは、15歳を対象に3年ごとに行われる。教育は、徐々にこのPISAの成績に影響を受け始めている。他国のPISAの点数をうらやむ人々は、自国の学校で判明している欠点を改善するために、成績上位国に目を向けて解決策を探すよう政府に求めている。

報道では、成績ばかりに目を奪われ焦った反応が伝えられるが、その報道の根底にある考え方は適切とは言えない。その考え方とは、あるひとつの地域内でうまくいったことは、単純に他の地域にも輸出できるということを前提としたものだ。つまり、もし上海でうまくいったのであれば、それはまさにワシントンでも必要とされている、というように考えるのである。

これは、教育政策を発展させていく方法としては極めておかしな方法だ。ある文化、ある社会の中で行われている学校教育のある一面を切り取り、全く異なる文化と社会に導入するということは、率直に言って不可能である。また、PISAに含まれている「重要なのは検証可能であること」という要素が、カリキュラムを狭めていることは明らかだと思われる。この要素が重視されて時間と資源が費やされるようになるが、その一方でカリキュラムのほかの部分や学びの他の特徴については片隅に追いやられて注意が払われなくなるのだ。

また、PISAは変化しているが、その変化の方向は、民営化を目指す新自由主義マニアの意向を反映し、彼らの後押しをするという方向である。PISAの初期の頃は、テストの開発、データの収集と分析は、専門組織から成る国際的な共同事業体にすべて委託されていた。2013年OECDは、米国でのテスト運営を、教科書と試験の巨大企業マグロウヒル・エデュケーションに依頼した。そして2014年には、教育分野で世界最大の企業ピアソンにPISA 2018の基本構想開発を依頼した。つまり、何をどうやってテストするのかは、ピアソンが決めることになる。ピアソンが現在教育分野で担っている役割について、私たちは注意深く見ていくべきだが、特に南の国々での動きについてそれが求められている。

常に稼ぐ

2015年7月、ピアソンはフィナンシャル・タイムズ(FT)を日本企業の日経に売却した。58年間ピアソンの子会社で国際的にも高い評価を得ていたFTを売却した理由として、ピアソンのCEO(最高経営責任者)のジョン・ファロンは、ピアソンの8億ポンド(13億ドル)あまりの年間利益に対し、FTの貢献が2,500万ポンド(4,000万ドル)にも満たなかったことを挙げた。(1)

年間80億ドル近くの売り上げを誇るピアソンは、教育分野に集中する決断を下したのである。これは、ある種の公民としての責任感によるものではない。どの分野で利益を上げるべきかという、現実的なビジネスの計算から弾き出された決断だ。ピアソンのモットーは、「常に学ぶ(always learning)」ということのようだが、コメンテーターたちが言うように、「常に稼ぐ(always earning)」という方がより適切と言えるのかもしれない。

ピアソンの教育への熱意は最近始まったことではない。ピアソンは、教科書、試験用紙、オンライン学習教材、教育ソフトウエアを制作し、大規模なコンサルタント業務も行っている。しかし、同社が4万人を超える従業員を擁して80を超える国で営業するグローバルな有力企業となったのは、ここ10年でのことだ。(2) PISA 2018の契約が同社に与えられたことは、この背景を含めて考える必要がある。ピアソンがすでに(大きな成功を収めながら)行ってきたことは、同時に教育政策にも影響を与えてきた。その過程で問題を確認し、その解決策も提供してきたのだ(こうして、さらなる利益につながる介入の機会を創出した)。

2011年ピアソンは、教育アドバイザーの責任者にマイケル・バーバー卿を任命した。バーバーは、教育コンサルタント業務を行う企業、マッキンゼーで働いており、英国のトニー・ブレア元首相の主席教育顧問として注目を浴びた。彼はその時、妥協せず、結果重視、市場をベースとした公共政策へのアプローチ「伝達・達成学」を提唱した。(3)

バーバーは、旧態依然で硬直した公共サービスの欠陥と欠如に対する処方箋として企業のイノベーションを用いるために、民間セクターに優位性があることを前提として物事を進めて政府内で多大な影響力を誇っていた。従って彼は、公的な学校教育に代わる利益促進を目的とした代替策を模索する企業にとって、うってつけの人材だった。2012年バーバーは、アフリカとアジア(特にインド、パキスタン、南アフリカ、ケニア、ガーナ、フィリピンといった高い成長を誇る新興国)で低料金の私立学校を支援する営利目的のベンチャーファンドとして、ピアソン・アフォーダブル・ラーニング・ファンド(PALF)を立ち上げた。

ビアソンは、すでにケニアに400校、ウガンダに7校を開校していた営利目的の企業チェーン、ブリッジ・インターナショナル・アカデミア(BIA)を買収した。そして、ナイジェリアとインドに進出する計画を立て、2015年までに1,000万人の生徒に対応できるようにする目標を掲げていた。この野心的な計画の特徴は、もちろんその規模にあるが、それがまたピアソンの投資戦略の原動力ともなっている。しかし、これと同じように特徴的で目を引くのは、その学校教育の将来像である。

BIAのビジネスモデルの戦略的特徴は、垂直統合された「アカデミーインナボックス(Academy-in-a-box)モデル」(「スターバックス式」学校教育とも呼ばれている)を基本としていることだ。これは、カリキュラムと教授法も対象に、プロセスや手法の大胆な標準化を伴うもので、企業が素早く展開して莫大な経済規模を達成することが可能な、データ分析とテクノロジーに大きく依存する。脚本が用意されたカリキュラムでは、教師が授業のどの部分で何をして何を話すべきかについて指示と説明が用意され、それがBIA本部とつながったタブレットPCを通じて送信され、授業計画と比較しての進捗と内容の確認、評価のための観察が行われる。(2)

このように、BIAが提供するのは、民営化、中央統制、結果中心といった特徴を持つ新自由主義教育のお手本である。費用効率は、規模が大きいことによるメリットだけでなく、この方式のユニークなセールスポイントによっても保証される。それはつまり、タブレットPCがあれば、誰が有能な教師を必要とするのだろうか、ということである。

ピアソンは、市場の中でもまだ未開拓な地域に進出していくことを目指す他の教育ビジネス企業と同様に、低料金の私立学校で遂げた成功を喧伝している。たとえば、学校とは無縁だった最貧層の子どもたちも利用し、競争にさらされているため公立学校よりも効率的で、より良い結果とより高い水準をもたらす、といった具合だ。

既存制度への打撃

これらの主張のほとんどは、独立した調査研究による裏付けはとれていない。これまでに行われている最も厳格な検証によれば、このような主張について少なからぬ疑いが生じている。(4) 学校とは無縁だった子どもたちに学校教育を提供するというよりは、低料金の学校は公立学校と競争しながら運営されているため、既存の制度にさらなる打撃を与えているように思われる。

しかしこの議論は、いかなる状況においても、多くの客観的な評価データを集めたからといって解決するものではない。なぜならそれは、教育とは何か、教育は何を目指すべきものなのか、という人々の見解に依拠するものだからだ。もしも教育というものが日用品で、脚本に沿った授業と「アカデミーインナボックス」のための必要品とシンプルな標準テストで測定可能な要素をひと揃えにして援助として運んで行けるものであれば、何も心配することはない。ピアソンは確かに常に学び、常に稼いでいくことだろう。

しかし、教育と名の付くものはそうではなく、そんな手法や製品と同様の扱いを受けるものではない、と言うのであれば、ジョン・ファロンやマイケル・バーバーが私たちに売り込むものに対する何らかのオルタナティブ(代替案)をきちんと深く考える必要がある。◆

by アダム・アンウィン&ジョン・ヤンデル

(1) The Guardian nin.tl/Pearsonboss
(2) Carolina Junemann and Stephen J Ball, Pearson and PALF, Education International, Brussels, nin.tl/Pearsonmutating
(3) Michael Barber et al, Deliverology 101, Corwin/SAGE, Thousand Oaks, 2011
(4) Laura Day Ashley et al, The role and impact of private schools in developing countries, nin.tl/privateschoolsSouth

NIブログ記事"PISA-envy, Pearson and Starbucks-style schools"の翻訳です。

翻訳協力:中村一郎


アダム・アンウィン&ジョン・ヤンデルの近著
"Rethinking Education: Whose Knowledge Is It Anyway?"
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  1. 2016/10/28(金) 02:06:23|
  2. 子ども・教育

【翻訳記事】 ラナプラザの教訓


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ラナプラザ崩壊の現場
Photo: rijansCC BY-SA 2.0



3年前にダッカの縫製工場のビルが崩壊した時、国際的な抗議の声がわき起こり、労働環境の真実が暴かれた。この出来事は、バングラデシュの労働組合と労働者に何らかの変化をもたらしたのだろうか? トゥルシ・ナラヤナサミーが報告する。


「私たちはもう我慢できません」。こう言うのは、バングラデシュの首都ダッカの縫製工場で働くリーリだ。「私たちはみな、ラナプラザ前と後の生活について話題にします」。抗議集会が行われている場所を通りかかった時、ストライキによって労働者が工場閉鎖後の補償を受けられるようになったことを知って驚いたリーリは、バングラデシュ衣料品産業労働組合連合(NGWF)に加入した。彼女は職場近くのスラムに住むが、息子と家族は離れた地方に住んでおり、会えるのはたった年1回。彼女は給料の大半を仕送りにあてる。

ラナプラザ工場が崩壊したのは2013年4月。1,130人が死亡し2,500人が負傷した。リーリのような女性にとって、それはその後の人生を方向付ける決定的な出来事となった。縫製産業は搾取の上に成り立っているが、ラナプラザ崩壊とその後のメディアの報道によって、労働者たちはそのことを非常に強く意識させられた。労働者たちは組織を作り世界的なファッションブランドに対して反撃を開始。だがブランド側は、服のデザインから縫い目ひとつにまで意向を押しつけてくるにもかかわらず、労働者の基本的人権を確実に工場に守らせるようにするほどの力はないと主張した。

職場である工場に本当の変化をもたらすのは、ファッションブランド企業や政府ではなく、労働者自身であることを理解している縫製工場労働者たちにとって、最大の懸念は労働組合結成の権利である。将来再びラナプラザの事故が起こることを防ぐには、それ以外の道がないことを彼らは分かっている。例えば今年初め、ダッカの縫製工場が火事になったが、もし火災発生が1時間遅かったら、工場は6,000人の労働者で一杯になっており、避難することはできなかったかもしれない。

ラナプラザの事故の後、待ち望まれていた「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関する協定」がわずか1週間で調印された。これは、工場の状態に関して、ファッション業界が初めて直接的な責任を認めるものとなった。しかし、法的拘束力をともなうこの協定も、その成否にかかわらず2018年末までとなっている。その成功の鍵は、工場を安全な場所にするために必要な改善を、今後2年間でブランド企業に約束させられるかどうかにかかっている。労働者たちは期待はしていない。彼らは、労働環境を向上させることができるのは、組織的に団結する以外にはないと力説する。ラナプラザが崩壊した日、そこで働いていた労働者たちは、壁に亀裂が走っているのを目撃してあわてて外に逃げ出した。しかし、戻って働くように命令されたのだ。個人では拒否するにもわずかな力しかなかったが、労働組合を結成していれば上司の命令に抵抗することができたかもしれない。工場に戻った労働者たちは、その1時間後にがれきの下敷きとなった。

2013年7月、バングラデシュは労働法を改正した。それは、労働組合の結成をかなり容易にするものだったが、労働組合の公的な承認と登録に必要な工場労働者の加入割合(組織率)は30%以上という要件は残された。労働組合結成への動きに対しては、労働者たちへの威圧と脅迫が広く行われるため、この30%という割合は非常に厳しいものである。特に大きな工場では、1,000人を優に超える労働者の加入が必要で、困難を極めた。また、職場で労働組合を結成しようとする労働者の契約解除は日常茶飯事だった。

だが、過去3年で新たな労働組合が結成され、組合員数の増加も堅調だった。とはいえ、労働者の組合組織率はたった5%である。やはり、各地の労働組合が多くの労力を費やしていたのは、解雇された労働者の復職を求めた交渉であった。目の前にある残業の強制、賃金未払い、不衛生な飲料水、生産目標達成への過度の圧力といった問題よりも、組合のリーダーたちを守る活動に力を注ぐこともしばしばだった。

大きなリスクを伴う闘い

各工場の職場の組合代表のほとんどは女性だが、労働組合の代表者たちはほとんどが男性である。バングラデシュの縫製工場で働く労働者の85%は女性であり、この点から代表性の不均衡と代表者不足は問題を引き起こしている。つまり労働組合の問題が、女性の権利というよりも一般的な労働者の権利という視点でとらえられているのだ。女性は、労働環境から圧倒的な影響を受けているが、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)だけでなく、職場で雇用主から男性とは別の扱いを受けるという問題もある。「難しい業務を任されるのはいつも女性たちです」、とある女性は説明する。「男性たちは梱包作業で私たちよりずっと高い給料をもらっています。でも、私たちも懸命に働いているのです」

女性リーダーの必要性は、現在多くの組合の検討事項に含まれている。だがバングラデシュでは、父権社会という広く刻み込まれた文化に挑む必要があり、その変化は遅い。その対応としては、ジェンダーに対する意識向上や女性のリーダーシップに関するトレーニングから、重要な代表的地位(書記長や代表など)を女性に限定する労働組合の規則の改正までさまざまである。

これは、「女性のエンパワメント」ということではない。この言葉は、女性たち自身からパワーがわき起こるのではなく、女性たちにパワーを与えることを意味する。しかし現実は、危険を伴いながらも女性たちが自身の権利のために積極的に闘っているのだ。労働組合で中心となる女性、組合に加入する女性に対して工場所有者は、常套手段としてギャングを使っての暴行、殺害脅迫、性的な嫌がらせを行う。労働組合に加盟している女性の縫製工場労働者で、暴言を浴びたり、身体的あるいは性的な暴行を受けたことがない人を探すのは難しいくらいだ。このような侮辱や虐待があまりにも一般化しており、女性たちはそれを困難な闘いに伴うリスクの一部として受け入れているほどである。

これからの挑戦

世界はラナプラザの後、自分たちの衣服を作る工場の恐ろしい労働環境と世界的ファッションブランドとの関係に気づいた。しかしファッションブランド企業は、新たな工場崩壊の防止には労働組合結成が最善策であるにもかかわらず、組合結成の権利の否定に相変わらず大いに加担している。企業は、自社のサプライチェーンに含まれる工場の詳細について公開を拒否しているが、それは結局地域の労働組合が労働環境を調査し、その情報を企業と顧客への働きかけに活用することを妨げているのだ。H&Mやマークス&スペンサーなど、ほんの一握りの企業がサプライチェーンの情報を公開している。ただ、各工場での生産量は公開されていない。このことにより、工場で権利侵害が発覚した場合でも、ファッションブランドは常套句のように言う。その工場での総生産量に占める当社の生産量は少ないため、労働条件改善への当社の影響力は限定的なものだ、と。

組織化を進めようとする女性の縫製工場労働者が直面する、これまで見てきたような困難に加え、いわゆる「黄色組合」[訳注:急進的な赤色労働組合とは異なる企業に協調的、従順な組合のことで、御用組合、企業組合などとも呼ばれる]の存在が彼女たちの状況を一層困難なものにする。黄色組合は、工場が結成したり政党と関係したりしている組合で、労働者が権利のために闘うのを積極的に妨げることで、労働者自身の独立した代表制のある組合結成を不可能にする。偽って労働者を代表し、労働者たちが集団的な行動を起こすのを説得して止めさせ、労働者を真に代表する組合結成の可能性に気づかせないようにするのだ。

国際的な労働組合組織、例えばインダストリオールは、どのような組合が加盟しているのかもっと見定める必要がある。もし国際的組織が黄色組合の加盟を許せば、労働者を支援するという独立した労働組合の大いなる努力は台無しになる。ある労働組合員は、「黄色組合を正当化することで、国際的組織は各国の労働運動を汚すことになる」と説明した。最終的に労働者は、堕落した組合の悪評を知らしめる必要がある。

NGWFで辛抱強く女性の権利のために取り組むアリアは、連帯の必要性を強調した。「一緒に働き一緒に闘うことができなければ、組合の意味はありません」と彼女は言う。労働者にとって、組合を活用し組合が提供する支援や研修を受ける必要性は、非常に高い。自らの労働組合を通じて団結し、組織化され、研修を受けた繊維工場の労働者たちは、頼れる勢力になるかもしれない。いや、なるはずだ。◆

by トゥルシ・ナラヤナサミー
英国のNGO「ワー・オン・ウォント」のアジア太平洋担当の国際プログラム・シニアオフィサー。
http://www.waronwant.org


2016年9月号NI495p24-25「Out of the ashes of Rana Plaza」の翻訳です。c495-100.jpg



  1. 2016/10/05(水) 01:49:27|
  2. ビジネス・企業