NIジャパンブログ

【翻訳記事】苦いブドウを甘くする(南アフリカ)


20170129ロバートソン
ロバートソンのワイン
Daytona WinosCC BY 2.0


南アフリカの西ケープ州にあるロバートソン・ワイナリーで、労働者ストライキが成功した。南アフリカ政府はこの結果、南アフリカのいくつかのワイナリーのアパルトヘイトのような状態について調査せざるを得なくなった。

ブドウ園労働者は、低い給与、人種差別、殺虫剤が原因の病気を耐え忍んでいる。労働組合に加入する、あるいは不満を訴えた労働者は、解雇される可能性がある。しかし、政府に保護策はない。

「1994年[アパルトヘイトの撤廃]から状況は悪化しています。彼らはまやかしを隠そうとしますが、人々が奴隷のように扱われていることはあなたにも分かるでしょう」。こう説明するのは、14週間にわたるストライキを昨年11月に成功に導いた「商業・港湾荷役・農業とその関連産業労働組合(CSAAWU)」のトレバー・クリスチャン事務局長だ。

このストライキ参加者の状況は、おぞまし現実を暴いたデンマークのドキュメンタリー『Bitter Grapes』(苦いブドウ)で広まった。その後ボイコットが起こり、ロバートソンのワインは南アフリカからスカンジナビアまで、店頭から消えたのである。

CSAAWUは、ストライキを画期的な勝利と考えている。彼らは生活に十分なレベルの賃上げは達成できなかったが、すべての労働者に過去にさかのぼってかなりの増額分が支払われることになり、年間のボーナスも出るようになった。さらに、ストライキの指導者たちが懲罰を受けることもない。現在CSAAWUは、他のワイナリーで闘っているという。

クリスチャン事務局長は言う。「ワイン業界は変わらなければなりません。政府は、奴隷状態の実情について調査を余義なくされました。全国のワイナリーで働く労働者たちは、ロバートソン・ワイナリーの労働者たちの功績に刺激を受けるでしょう」◆

by ピーター・ケンワーシィー(Afrika Kontakt


2017年1/2月合併号NI499p7 Bitter grapes sweeten (South Africa) の翻訳です。c499-100.jpg



  1. 2017/01/29(日) 16:39:36|
  2. 市民・ムーブメント

【翻訳記事】「水破産」は現実になるのか(イラン)


20170129ピスタチオ
イランの古い商都タブリーズのバザールで売られているピスタチオ
Adam JonesCC BY-SA 2.0


イランで原油に次ぐ輸出品はピスタチオである。しかし何年も続く干ばつで水不足となっており、ピスタチオ栽培農家の将来に暗雲が立ちこめている。

水危機は全国的に悪化している。イランの環境政策専門家カーヴェ・マダニは、イランは川や湖といった地表水を使いつくした上に地下水資源も70%減少し、「水破産」に直面していると述べる。

水不足の原因は、お粗末な管理、非効率な農業セクター、急激な人口増加であるが、現在状況は気候変動によって一層悪化している。イサ・カランタリ元農業大臣によれば、砂漠化によって早ければ2030年にはいくつかの州で人が住めなくなり、政府が緊急に行動を起こさなければ、すでに水が不足が起こり人口密度も高い地域に人々が移動する可能性がある。

イランが危機を乗り越える試みとして大きく頼っているのが、技術的な解決策である。政府は、干ばつが起こっている地方に脱塩化(海水の淡水化)した水を送る大規模なプロジェクトを計画している。

そんなプロジェクトには、カスピ海から水をくみ上げて460キロメートルの地下管路を通して町に送るというものや、4,700万人の飲料水を確保するためにペルシャ湾とオマーン湾から水を送るというものもある。

環境問題専門家は、このようなプロジェクトは生態系を破壊する可能性があると警告する。脱塩化プロセスからはブライン[訳注:濃縮塩水のことで、塩分濃度が高いだけでなく、もともと海水に含まれていた汚染物質も濃縮されてしまう]という廃棄物が生じるが、すでにいくつかの海水淡水化プロジェクトではそのブラインがペルシャ湾に排出されており、海洋生態系を変えたり地元漁民の生活にも脅威となっている。

マダニは、より持続可能な解決策は人々の節水を後押しすることだと考えている。

一方ピスタチオ栽培農家は、水不足の対策として革新的な方法を模索している。農民の多くは、栽培する作物の種類を多様化し、耕作地を縮小し、効率的なスプリンクラーや点滴かんがい技術などを取り入れている。◆

by リディア・ヌーン


2017年1/2月合併号NI499p6 Water bankruptcy looms (Iran) の翻訳です。c499-100.jpg



  1. 2017/01/29(日) 16:22:28|
  2. 環境・資源

【翻訳記事】報道されなかった2016年


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Thijs PaanakkerCC BY 2.0
アムステルダムのアイ湾で会話をする人たち
「人間社会のどんな問題であっても、解決のための最良の方法は、すべての当事者が座って対話をすることである」
ダライ・ラマ
このダライ・ラマの言葉は上の写真の引用元にあった言葉ですが、2017年はこの言葉が特に実践されることを望みます。



※あまり報道されなかった2016年のニュースを取り上げています。各ニュースの写真は、こちらの英語ページに掲載しています。


アフリカ Africa

◆南アフリカ South Africa
写真は、麻酔薬を打ったクロサイを横たえるところで、クラークスドロップ郊外の農園で慎重に行われていた。密猟を防ぐために、これから角を切断するのである。密猟数は減少し、この対策の効果は現れている。2016年の1月から7月の間に発見されたクロサイの死がいの数は702体で、昨年同時期は796体だった。しかし環境省の調査によれば、ゾウの密猟が増えたという。2016年1月から7月までの間に密猟容疑で414人が逮捕された。

◆モロッコ Morocco
この高齢の女性は、スペインの小さな飛び地領土メリリャから国境を越えてモロッコへ向かう。彼女は、背中に商品を背負って毎日売りに行く何千という行商人のひとりだ。中には、80キログラムもの荷物を背負う行商人もいる。彼らにとって国境越えはたやすいことである。このようにして越えていけば非正規の取引ができ、関税の支払いを免れることできる(「個人の荷物」であれば運び込みは合法である)。しかし難民が国境を越えることはほとんど不可能だ。2016年にスペインは、庇護を求めてやってくる人々がこの北アフリカの飛び地からEU(欧州連合)に到達することを防ぐため、警備を強化した。メリリャは現在10メートルのフェンスと堀に囲まれ、警備員が配置されている。

◆ガボン Gabon
すでに見た光景? 選挙後の9月、2009年の選挙後と同じ状態が繰り返されたガボン。今回は現職のアリ・ボンゴが獲得票の割合で1%に満たない僅差で再選を決め、その後に政府に対する抗議活動が勃発。対立候補のジャン・ピンの支持者と警察が衝突した結果、首都リーブルヴィルにある議会の内部は写真のように黒焦げとなった。衝突で3人が殺され1,000人以上が逮捕された。選挙を監視していた複数の海外組織はこの選挙を批判し、ボンゴは資金とメディアをより有利に活用して役立てたと述べている。


ヨーロッパ&中央アジア Europe & Central Asia

◆ベラルーシ Belarus
子どもたちは、リハビリテーション・保健センターで理学療法を受けている。場所は、1986年のチェルノブイリ原発事故によって汚染されたミンスクの郊外だ。ユニセフ(国連児童基金)によれば、原発事故後に生まれた子どもは、放射能降下物が原因で、甲状腺がんにかかりやすく、その他さまざまな健康問題も引き起こしやすい。事故から30年を迎え、リトアニアとの国境沿いに建設中の原子力発電所に対して怒りが広がっている。政治家のミカライ・ウラセヴィッチは報道陣に、政府は「火葬場を建設している」と述べた。

◆トルコ Turkey
4月、イスタンブールの主にクルド人やアレヴィー人が住む地区に、民兵組織が現れた。その地区では、政府の少数民族への対応を非難するデモが定期的に行われている。2016年、エルドアン大統領のクルド労働者党に対する取り締まりは、一層厳しいものになっていった。エルドアン大統領は5月、30年以上に及ぶクルド人独立に向けた戦いの終結を目指して2012年に始まった和平交渉について、再開はないだろうと述べた。彼は、「反逆者の最後の一人を殺すまで」軍事行動を続けるだろうと語った。

◆ウクライナ Ukraine
アゾフのサマーキャンプでの一コマ。子どもたちは胸の前に腕を水平に掲げ、「ウクライナ、英雄の聖なる母、私の心に宿る…。あなた方、聖なる人々、私の命と喜び」と歌う。政府と親ロシア派反政府軍との戦いが続く中、次の世代の兵士たちは戦いの準備を行っている。8月のこのキャンプには、8歳から16歳の50人の子どもたちが参加し、武器の扱い方や撃ち方を学んだ。彼らは戦闘状況に沿ったサバイバルトレーニングと戦術的な知識も学んだ。今も続く戦いによる死者は、11月までで合計9,700人に上る。


アメリカ大陸 Americas

◆米国 United States
若い住民が木道に座っている。この写真は、2016年7月にアラスカの先住民が暮らす村ニュウトックにて撮影された。米国の北部遠隔地域のほとんどを覆っている永久凍土は、気候変動の影響を受けて溶け続けている。永久凍土が溶けるにつれ、地盤沈下が起こり道路や建物が損傷し、溶けた土壌からは大量の温室効果ガスが放出される。ニュウトックの住民350人は、2013年に移住する予定だったが、地元での政治的な争いで計画は中止となった。村で最も高い場所には小学校があるが、2017年末にはそこも海面下に沈む可能性がある。

◆キューバ/コスタリカ Cuba/Costa Rica
パソカノアスにたどり着いたキューバ移民のカップルが、一時的なシェルターのテントで休んでいる。今年初め、米国へ向かう8,000人ほどのキューバ人が、ニカラグアの通過許可を待ってコスタリカで足止めされた。現在米国の法律には、米国にたどり着いたキューバ人は、在留する権利があるとうたわれている。しかし、ドナルド・トランプが大統領に就任すれば、この権利に異議を唱えることになりそうだ。2月にトランプは、1996年のキューバ人地位調整法に基づいたキューバ人への特別な上陸許可は「誤り」である、とリポーターたちに語った。彼は11月のカストロの死去から数日のうちに、このカリブ海の島に再び制裁を科すと脅しをかけた。

◆チリ Chile
1973年の軍事クーデターの記念日である9月に行われたデモで、機動隊員の目をにらみ付けるデモ参加者。この写真はSNSで広まり、少女の果敢な反抗的態度に、1989年の天安門事件の時に戦車の前に立ちはだかった男性を思い出すというコメントも見られた。しかし2016年チリ人たちは、ほかにもさまざまな理由で町に出て抗議を行った。例えば、学生たちは教育改革を求め、タクシーの運転手たちはオンデマンド配車サービスのウーバーに抗議し、漁師たちは海産物を汚染したアオコの「赤潮」への対策を政府に求め、多くの人々が年金制度について怒りの声を上げた。


南アジア South Asia

◆インド India
再利用可能な物をゴミの中から拾う子どもの写真は、ハイデラバードのゴミ処分場で2016年10月に撮影された。その同じ月、ビジャヤワダの町では行政と議員が膠着状態に陥り、ゴミ回収がストップし、ゴミが町の至る所でうずたかく積まれた。だがこれはこの国のゴミ危機の氷山の一角でしかなかった。インドでは毎日14万トンのゴミが出るが、その多くが埋め立て処分場に運ばれる。回収されるゴミは83%だけで、処理が行われるのはそのうちの29%のみである。1月には、18階分の高さに達したムンバイの埋め立て処分場が火事になり、発生した大量の煙は宇宙からも見えるほどだった。

◆カシミール Kashmir
このスリナガルの病院にいた男性は、警察と抗議参加者の間で起こった7月の衝突で負傷した。カシミールの分離を目指すヒズブル・ムジャヒディンの司令官ブルハーン・ワニがインドの治安部隊に殺された後、カシミールでは暴力と不安定な状態が最悪のレベルに達している。この殺人の結果抗議活動が広がり、インドのザ・タイムズ紙によれば、85人が死亡、1万3,000人の抗議参加者と400人の治安当局者が負傷した。このインド支配地域では7月に夜間外出禁止令が出され、11月現在でもいくつかの地区でその制限が続いている。

◆バングラデシュ Bangladesh
75歳のモイン・ミアッが、なくした所有物を探すためにバナナヤシの幹につかまって水に浮かんでいる。7月と8月、バングラデシュ北部と中部はモンスーンの洪水に見舞われ、数百万人が影響を受けた。少なくとも25万軒が被害を受け、1万7,000軒は完全に流されてしまった。災害によるリスクを、脆弱性と自然災害(台風、干ばつ、地震、洪水、海水面上昇)の発生を掛け合わせて計算する『世界リスク報告書2016』によれば、世界で一番リスクが高い国はバヌアツで、その次は、トンガ、フィリピン、グアテマラと続き、バングラデシュは世界で5番目となっている。


東アジアと太平洋 East Asia & Pacific

◆ソロモン諸島 Solomon Islands
オントンジャワ環礁にあるガダルカナル島のロード・ハウ居住地の住民たちが浜辺に集まっている。この居住地は、高潮や海水面上昇の影響を受けやすく、住民は現在首都ホニアラへの移住を検討している。しかしコミュニティーのリーダーたちは、69の現地語(それに加え、人口の2%しか使っていない公用語の英語と、共通語となっているソロモン英語がある)の中でもオントンジャワ語は2,400人しか使用しておらず、次の世代が先祖代々の土地と無関係な新たな場所で育っていけば、自分たちのポリネシ人としてのアイデンティティーと母語が失われてしまうことを危惧している。

◆スリランカ Sri Lanka
カルピティヤでマングローブに植える苗木を運ぶ自然保護事業の作業者たち。これは、1万5,000ヘクタールのマングローブ林を保護するという壮大な計画の一環だ。汽水域に生えるマングローブの樹木は、土地の保護と生成に役立ち、炭素を吸収して温暖化の影響を緩和する。また、2004年にスリランカの東岸が津波に襲われた際の状況が示すように、自然災害による打撃を和らげる効果がある。それ以来マングローブは保護地域に指定され、樹木を伐採した場合は刑罰を科すことが可能になった。2016年7月マイトリーパーラ・シリセーナ大統領は、スリランカ初のマングローブ博物館を開館した。

◆タイ Thailand
無情な政権である。写真は、7月に撮影されたバンコクにある重警備のクロンプレム刑務所の屋外での運動の時間だ。2016年10月現在、タイの受刑者数はあとわずかで30万人に達するところまできており、人口10万人あたり443人であった(10万人当たりカナダは114人、米国は693人)。受刑者たちは公式には収用定員が合計で21万7,000人となる114カ所の刑務所に詰め込まれている。パイブーン・クムチャヤ法相は7月、政府の麻薬に対する厳格な法律がうまくいっていないことを認めた。また彼は、メタアンフェタミンをカテゴリー1薬物からグレードを下げるとともに、麻薬売人あるいはより一般的な薬物所持で逮捕された者の刑期の短縮を望んでいると語った。


中東 Middle East

◆レバノン Lebanon
11月、人々が待ち焦がれていた雨が降ったレバノン南部で、腐ったオレンジに乗ったカタツムリ。3月にNASA(米航空宇宙局)は、1998年から続く地中海東部の干ばつが引き続きキプロス、イスラエル、ヨルダン、レバノン、パレスチナ、シリア、トルコに影響を与え、状況は過去900年で最悪であるとことを明らかにした。科学者らは樹木の年輪(干ばつの年は幅が狭くなり、水が豊富な年は広くなる)を調査し、現在の干ばつに関しての評価を行った。その結論は、報告書の主要著者ベン・クックによれば、これには「ある種の人間が原因となっている気候変動の影響が見られる」という。

◆イエメン Yemen
フーティー信奉者の3月集会で、テントの隙間から様子をうかがう女性。集会は、イエメンの首都サヌアにサウジアラビア主導の空爆が行われていることに対して、抗議する目的で開かれた。フーティーの情報源がアル・アラビヤ・ニュース・チャンネルに語ったところによれば、初めてとなる女性の民兵部隊が9月に結成されたという。イエメンの女性は長い間、差別と暴力に直面してきたが、内戦は彼女たちをよりぜい弱な立場に追い込んでいる。UNFPA(国連人口基金)は、2016年1月から9月の間に、性別に基づく暴力が8,031件報告されたと伝えている。だが、女性がそのような暴力を報告することを妨げる社会的な規範が存在するため、実際の件数はずっと高いと考えられる。

◆パレスチナ Palestine
忍者スタイル。2014年にイスラエルによって破壊されたガザ地区のビルのがれきの前で、パレスチナ人の若者が手に刀を持ってジャンプし、その技能を披露している。地元の武術クラブで2年間の訓練を受けた若者たちがチームを作り、定期的に公演を行うことを決めた。彼らは、有名になっていつか誘いを受けて国際的なコンテストに参加することを望んでいる。2016年、パレスチナの若者の失業率は42%に達しており、多くの若者が貧困に陥り挫折感を抱えている。

この記事は、The Unreported Year 2016の翻訳です。


  1. 2017/01/22(日) 23:25:23|
  2. 国・地域

【翻訳記事】世界の国のプロフィール:南スーダン


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サルバ・キール(左)とリエク・マーシャル
Day Donaldson(CC BY 2.0

ジュバ空港からの道(この国では数少ない舗装路のひとつ)の両脇には、荒廃した建物が続く。その建設途中や崩れ落ちた建物は、2011年に多大な努力の末に成し遂げたスーダンからの独立後の希望満ちあふれた日々の名残である。かつてはナイル川沿いの小さな交易拠点のひとつだった首都ジュバも、現在はほこりっぽい町が不規則に広がり、国連スタッフ、軍、隊列を組んで走る自動車があふれる場所になっている。顕著なインフラ不足(首都以外ではより目立つ)は、長い間無視されてきた歴史を物語っている。

英国は1956年のスーダン独立に際し、文化、民族、言語、宗教の点ではっきり異なる南部地域に自治の約束をしたが、実現はできなかった。このことにより、不可避な衝突の扉が開いた。その後、南部地域の自治権を認めた1972年のアディスアベバ合意によって、ささやかな安定への扉が開かれた。しかし1983年、この合意は崩壊し、再び敵意がむき出しとなり、ジョン・ガラン率いる反政府勢力「スーダン人民解放軍(SPLA)」の結成につながった。

国際社会の強力な圧力によって2005年に南北包括和平合意(CPA)が結ばれるまで、ゲリラとの間ですさまじい戦いが続いた。このCPAでは、南部の分離をはかる国民投票の実施が約束された。CPA締結の数カ月後、ジョン・ガランがヘリコプター事故で死亡して副大統領だったサルバ・キールが後を継ぎ、和平合意は危機に直面した。しかし、欧米諸国からの圧力によってCPAは予定通り進み、2011年には南部スーダン人の98.8%が独立に賛成票を投じた。

だがCPAは、2つの問題を完全には解決しなかった。ひとつは、北部と南部の間の厳密な国境の確定(争いが続く石油が豊富なアビエイ地区を含む)。もうひとつは、南部の油田の利益の南北間での分配についてである。独立によって南スーダンは、分離前のスーダンの油田の4分の3を支配下に置いた。しかし油田は内陸にあり、精製施設と輸出拠点があるのはスーダン側だった。スーダンは途方もない通行料を要求し、南スーダンはそれに抗議するため、独立から6カ月後に石油生産停止という捨て身の最終手段に打って出た。

独立時、この新しい国の予算の50%以上を軍事予算が占めていたが、その支出はSPLAを構成する民兵組織(民族ごとに分かれてその関係は複雑)の忠誠を保つために必要なものだった。15カ月間石油収入が途絶えたキール大統領は、当時主導権争いをしていたリエク・マーシャル副大統領など政敵を押さえ込むことができなくなった。キールとマーシャルはそれぞれディンカ民族とヌエル民族出身で、それぞれの民族内では最有力者だった。そして彼らの争いが影響して2013年12月には内戦が勃発した。

どちらの民族も相手民族に対して毎日のように残虐行為を行った。遅々として進まない和平交渉だったが、2015年8月には貧弱な和平合意につながった。その内容には権力の分担に関する提案が含まれていたが、実施まで9カ月以上かかった。しかし2016年7月、ジュバの町で再び激しい戦闘が勃発し、平和維持への期待は打ち砕かれた。

何万という人々が死亡し、230万人が住まいを追われただけでなく、独立以来築いてきたささやかな発展までもがこの衝突によって破壊された。世界の原油価格の下落とパイプラインの関税に加え、石油企業への負債で生じる利子、そしてドナーからの支援が人道活動へ配分し直されたこともあり、政府の歳入はほとんど無きに等しくなった。

この国は現在、政治的、経済的に崖っぷちの状態にある。ハイパーインフレーションに加え、ふくれあがった軍隊に間もなく支払いが滞るであろう軍事費のこともあり、さらなる不安定化は避けられない。地域仲裁活動の専門家であるベルナール・スヴァは、「戦争の前、地域コミュニティーがしっかりしていたが、現在その地域コミュニティーは破壊されてしまった」と述べた。南スーダンの歴史は紛争と貧困の歴史だが、その未来はこれまで以上に厳しいように思える。◆

by エレノアー・ホブハウス

データ   170101Flag_of_South_Sudan.jpg

指導者:サルバ・キール大統領
経済:1人当たりの国民総所得(GNI)は790ドル(スーダン1,710ドル、英国43,430ドル)。独立前の2010年は1,060ドルだった。
通貨単位:南スーダンポンド(SSP)
輸出:南スーダンの輸出のほとんどを占めるのが石油で、GDP(国内総生産)に占める割合は約60%。しかし国民のほとんどは、農業や家畜飼育で自給中心の生活を送っている。石油価格の下落によって大打撃を受け、通貨は暴落し、インフレは300%に達した。
人口:1,230万人。人口増加率は年3.0%。現在人口は2000年の倍になっている。人口密度は1平方キロメートル当たり21人(英国267人)。
保健:1,000人当たりの1歳未満児死亡数(乳児死亡数)は60人(スーダン48人、英国4人)。衛生的な水を利用できているのは人口の55%で、適切なトイレを利用できているのは15%のみ。妊産婦死亡の生涯リスク[訳注1]は26人に1人(英国5,800人に1人)。HIV感染率2.5%。
環境:国土の大半は乾燥地帯で、過放牧による草地の劣化に苦しむ。国を貫いて流れる白ナイル川は季節によって川幅が広がり、広大な湿地帯を生み出す。国民1人当たりの二酸化炭素排出量は0.1トンである。
民族:最大で64の民族が確認されている。最大の民族はディンカ民族で、人口の35%近くを占める。一方ヌエル民族は人口の16%あまりを占める。どちらの民族もより大きなニロティック系民族グループに属し、そこにはより小さな遊牧民族も含まれる。アザンデやバリなど南部では定住農業が行われている。
宗教:キリスト教徒61%、イスラム教徒6%、伝統的なアフリカの宗教(複数)33%。
言語:公用語は英語。アラビア語は広く使われている(首都で使われるシンプルな形式の「ジュバ・アラビア語」も含む)。ディンカ、ヌエル、バリ、ザンデなど、地域言語が約80使用されている。
人間開発指数[訳注2]0.467で、188カ国中169番目(スーダン0.479、英国0.907)。

訳注1:妊娠や出産時、あるいはそれに関連する病気で死亡する生涯にわたるリスクのこと。妊産婦死亡率は1回の出産に対するリスクとなるため統計の取り方が異なる。
訳注2:国連開発計画の「人間開発報告書」で使用されている、各国の人間開発の度合いを測るための経済社会指標。0から1で示され、1に近いほど個人の基本的な選択肢が広く人間開発が進んでいるとされる。

NI五つ星評価
(南スーダンは今回が初めての評価)

とても良い ★★★★★
    良い ★★★★
    普通 ★★★
    悪い ★★
   ひどい ★

所得配分 ★
人口の半分近くにあたる510万人が食料の支援を必要としている。その一方でわずかなエリートが、国の資源や財産をかすめ取る人間達とつながって莫大な財産を築いていると言われている。

平均寿命 ★
56歳(スーダン64歳、英国81歳)。世界の順位では下から11番目。

女性をめぐる状況 ★★
政府上級職と議会では、女性の割合が25%として決められている。しかし昔からの家父長制度が根強く、学校に通っている女児は33%にすぎず、先日の衝突では女性に対する暴力が劇的に増加した。

自由 ★
報道の自由インデックスでは180カ国中140位で、過去2年間で21も順位を落とした。2016年6月に起こった学生の抗議活動に対して、治安部隊が激しい弾圧を行った。しかし一方で「2016年NGO法」には、制限的な条項や政府の監視を牽制する内容も含まれている。

識字率 ★
推定で27%。6~17歳の子どもたちの70%は学校に通ったことがない。

セクシャルマイノリティー ★★
男性間性交渉は違法で、10年の禁固や懲役となる(これは、スーダンの英国植民地時代の法律がもとになっている。女性間に関しては言及がない)。社会では差別が広がっている。

NIによる総合評価

政治 ★

ハルツームのスーダン政府との数十年にわたる戦争の間、政府は自らの行動に関して説明責任を果たしてこなかった。この姿勢が新しい政府にも引き継がれている。世界で最も新しい国は、慢性化した腐敗に悩まされ続けている。身の毛もよだつ恐ろしい内戦は、国の資源や資金を支配する目的で行われている、ライバル民族のエリートたちが後押しするネットワーク同士の主導権争いに端を発している。衝突において両陣営は、民族間の分断を積極的に利用し、どの勢力も裁きを受けることなく今も悪事を働いている。そして政府は、悪化する経済的、政治的危機に対して、市民の自由を制限するという対応をとっている。


2016年12月号NI498英国版から「Country Profile: South Sudan」の翻訳です。


  1. 2017/01/01(日) 17:31:13|
  2. 国・地域