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【翻訳記事】ミツバチにやさしい農業でより健やかな未来へ


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 送粉者(受粉媒介者)が元気で作物が豊かに実るよう取り組むイタリアの有機農家

ジョルジォ・バラカニは、朝の光と花々の香りを追いかけながらひと晩中運転してきた。他の養蜂家たちと会うためにサービスエリアに少しだけ立ち寄り、黄色いヒマワリ畑と青い海がまだら模様に見える丘へと向かう。

バラカニが向かう丘は、ローマから300キロのマルツォッカの近くにある。彼は24年以上にわたり、転地養蜂[訳注:蜜源の開花時期に合わせて移動しながら行う養蜂]を営んできた。350個の巣箱を所有し、作物が花をつける時期に農家に巣箱を20日間ほど貸し出し、巣箱1個あたり平均32ユーロ(35ドル)を稼ぐ。

バラカニは、夜の間に巣箱数箱を小型トラックに積み、畑に運ぶ。農民たちは、果樹や野菜の花が咲く時期になると授粉を依頼する。それが、作物の品質と収量の向上を促すのだ。このことは、果物と野菜の2015年の売り上げが前年比で野菜5%以上、果物3%以上増加した(イタリア全国農業者連盟の統計による)国にとって、大きな意味を持つ。

転地養蜂は、いろいろな種類のはちみつを生産したいという思いから生まれたが、やがて作物の改良やミツバチの命を守る目的で行われるようになった。バラカニは、2008年にイタリアでミツバチが大量死したことを説明した。ハチは、使用された農薬の中でも特にタネ用トウモロコシに使われたネオニコチノイド系農薬によって方角が分からなくなり、帰巣ルートが見つけられず、最後には死んでしまったのだという。これを受け政府は、予防的措置としてこれらの物質を禁止し、この問題について調査を始めた。

「アペネット・アンド・ビーネットという国のプログラムでとられた措置の結果、問題は減ってきています」と言うのは、ボローニャ大学の昆虫学者で、このプログラムの責任者のひとりでもあるクローディオ・ポリーニだ。しかし欧州食品安全機関(EFSA)のアニエス・ロータイスは、この程度の減少では不十分だ、と説明する。「ハチの死因は複数あり、その影響は場所や季節によってさまざまです」。彼は死因について、「化学的栄養的な状態、気候変動、病気、不適切な養蜂法、環境資源の不足」などがあると言う。

イタリアのはちみつの生産量は、2011年から70%近くの減少となり、イタリア全国養蜂家委員会(Conapi)は警鐘を鳴らす。ハチという送粉者にとって深刻な痛手となったのは、広大な土地に1種類の作物だけを栽培する単一作物栽培の導入だ。

単一作物栽培はハチには適さない、と説明するのは、「生物多様性のためのスローフード協会」のセレナ・ミラノだ。ハチは、その免疫システム維持のために異なる種類の花粉を食べる必要がある。バラカニが小型トラックで移動するイタリア中央部のポー平原は、残念ながらトウモロコシ、小麦、人参、タマネギ、アルファルファなどの単一作物の畑で埋め尽くされているような場所だ。 しかし、地域の複数の作物の生産性を上げるには、混合栽培農業を行い、転地養蜂を継続していくことが不可欠だ。

ジョルジォ・バラカニのストーリーをマンガで読む(ISSUUのサイトへ)


 アルプスからの景色

世界で初めて住民投票によって農薬の使用禁止を決めたマレの町の話をヨハネス・フラグナーが語っている時、教会の鐘が高らかに鳴り響いた。フラグナーは薬剤師で、スイスから10キロ、オーストリアから20キロに位置するこの小さなアルプスの町の中心部に住み、そこで働いている。この町は、ヨーロッパでも果物生産に力を入れている最大の地域のひとつだ。だが、マッレスの住民たちは、町の景色の中にりんごの木一色の場所が現れるような集約農業を望まなかった。

フラグナーは、2014年の住民投票実施を呼びかけた住民のひとりだ。 住民の4分の3が投票し、そのうちの76%が農薬不使用の町に暮らすという選択に票を投じた。「この考えは2010年に生まれました。地元の有機栽培農家たちは、近隣の畑で使用された農薬で汚染された草が風で飛んできて、それを飼っている牛たちが食べるのではないかと不安を感じていました」とウルリッヒ・ベイス町長は語る。 投票後、住民の意思を反映して条例が変更された。違反者には300〜3,000ユーロ(325〜3,250ドル)の罰金が課される。

参考記事:Little insects, big impact. How Indian farmers are improving productivity, and lives, by introducing bee hives to their fields.(小さな昆虫、大きな影響。ハチの巣箱を畑に置くことで、インドの農民たちはいかにして生産性と生活を改善しているのか。)

農業に許された選択肢は、将来の生物多様性を尊重すること以外になく、ミツバチはそれに不可欠な指標であることを、フラグナーと仲間の住民たちは十分に理解している。「送粉者の働きがなければ、食物連鎖の重要な部分が失われることになるかもしれない。そうなれば、私たちの食生活に影響するでしょう」と語るのは、全国イタリア養蜂家組合協会(Unaapi)会長のフランチェスコ・パネラだ。 「ミツバチは、将来の食料生産を約束してくれます。しかし、私たちはより持続可能な農業モデルを構築する必要があります」。この方向性は科学界も支持する。「食料は命と同じように考えるべきであり、危険物質であってはなりません」と言うのは、腫瘍専門医で、農薬が人間に与える影響の研究も行っている「環境のための国際医師協会(ISDEイタリア)」メンバーでもあるパトリツィア・ジェニリーニだ。「農薬購入1ドルに対し、その影響に対応するための衛生と社会的なコストとしてさらに2ドルが必要です」

マッレスは、環境にやさしい農業の道を進んでおり、他の地域もその道を歩み始めている。フランスでは今年、ネオニコチノイド禁止を目的に生物多様性に関する法律の改正が承認された。それは、2018年に施行される。

ヨハネス・フラグナーのストーリーをマンガで読む(ISSUUのサイトへ)

翻訳:セシリア・ガルシア


Hunger4Beesは、ヨーロッパ・ジャーナリズム・センターの「開発報道におけるイノベーション助成プログラム」(ジャーナリズム助成プログラム)との共同プロジェクトである。

by ダニエラ・フレチェロウ、モニカ・ペリッチャ、アデリーナ・ザーレンガ


NIブログ記事A bee-friendly path to a healthier future の翻訳です。


翻訳協力:斉藤孝子


  1. 2017/02/27(月) 23:16:27|
  2. 健康・食・農業