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【翻訳記事】国際海底機構がすべきことは、海洋生態系の搾取ではなく保護である


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深海魚の一種、アオメエソ科の魚。



深海底というほとんど未知で脆弱な場所にとって、リスクのある産業向け実験がいかに危険なものなのか、先日開催された国際海底機構(ISA)会合においてきちんと検討されるべきであった。パイヤル・サンパットが報告する。


深海底採鉱というと、何やらSFめいて聞こえる。確かに、企業が主張するような深海底のコバルトリッチクラスト、マンガンノジュール、そして熱水噴出孔から金属を採取する技術の見通しは、現実よりもフィクションに基づく話のように思える。深海における実行可能な採掘技術はまだ確立されておらず、多くの企業と政府がその日が来ることを待ち望んでいる。

深海底採鉱には高いリスクが伴うが、実証実験が計画されているのは地球上で最もぜい弱で手つかずの場所だ。海、そこに住む生物、そして漁業に対して潜在的にどれほどの打撃となるのかもほとんど分かっていない。深海生物の多くは、研究どころかいまだに未発見なのだ。ドイツの科学者らが、全生物の祖先が深海底の熱水噴出孔に生息していたという研究結果を報告したのは、最近のことである。

今年7月ISAは、ジャマイカのキングストンで年次会合を開いた。誰もが考えるのは、ISAは国連海洋法条約の下で設立された国際機関ゆえに、全世界の共有財産である海と海洋生物の保護を一番の使命とする、ということだろう。しかし、これまでの現実は異なるものだった。

ISAはすでに太平洋の海底で150万平方キロにわたって26件の探査許可を出し、さらに追加で大西洋、インド洋、紅海にも探査海域を設定した。これらの追加海域では、毎月順次探査許可が下りているが、そこでの監督活動はほとんど行われておらず、またそのような広大で破壊的な産業活動が海洋生物、生態系システム、沿岸部コミュニテーにもたらす打撃についてもほとんど理解されていない。

ISAの役割は、海洋生物を守るべく注意深く監督し、予防的な原則を実行に移していくことだ。ISAは、企業や政府らが全世界の共有財産を使って実験をしたり、そこから利益をむさぼったりすることを許すわけにはいかない。ISAは、深海環境の研究、監視、保護を促進しなければならない立場にいるのである。

また、ニュージーランドが2015年に62万平方キロにおよぶカーマデック海洋保護区を設定したように、国際機関や各国は協力して深海保護区を設定すべきである。

ISAの使命とは、海洋の搾取方法の指南にあたることではなく、海洋保護の実施を行うことでなければならない。ISAの鉱業規則の中の採鉱規則草案は、危険な産業向け実証実験のために海洋を切り分けて与えるという内容ではなく、ISAの使命が具体的に盛りこまれたものでなければならないのだ。

by パイヤル・サンパット
Earthworksの鉱業プログラム責任者を務める。


NIブログの記事“Protect ocean ecosystems, not exploit them, is what the ISA must do”の翻訳です

翻訳協力:斉藤孝子


  1. 2016/08/28(日) 23:20:14|
  2. 環境・資源