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【翻訳記事】 ラナプラザの教訓


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ラナプラザ崩壊の現場
Photo: rijansCC BY-SA 2.0



3年前にダッカの縫製工場のビルが崩壊した時、国際的な抗議の声がわき起こり、労働環境の真実が暴かれた。この出来事は、バングラデシュの労働組合と労働者に何らかの変化をもたらしたのだろうか? トゥルシ・ナラヤナサミーが報告する。


「私たちはもう我慢できません」。こう言うのは、バングラデシュの首都ダッカの縫製工場で働くリーリだ。「私たちはみな、ラナプラザ前と後の生活について話題にします」。抗議集会が行われている場所を通りかかった時、ストライキによって労働者が工場閉鎖後の補償を受けられるようになったことを知って驚いたリーリは、バングラデシュ衣料品産業労働組合連合(NGWF)に加入した。彼女は職場近くのスラムに住むが、息子と家族は離れた地方に住んでおり、会えるのはたった年1回。彼女は給料の大半を仕送りにあてる。

ラナプラザ工場が崩壊したのは2013年4月。1,130人が死亡し2,500人が負傷した。リーリのような女性にとって、それはその後の人生を方向付ける決定的な出来事となった。縫製産業は搾取の上に成り立っているが、ラナプラザ崩壊とその後のメディアの報道によって、労働者たちはそのことを非常に強く意識させられた。労働者たちは組織を作り世界的なファッションブランドに対して反撃を開始。だがブランド側は、服のデザインから縫い目ひとつにまで意向を押しつけてくるにもかかわらず、労働者の基本的人権を確実に工場に守らせるようにするほどの力はないと主張した。

職場である工場に本当の変化をもたらすのは、ファッションブランド企業や政府ではなく、労働者自身であることを理解している縫製工場労働者たちにとって、最大の懸念は労働組合結成の権利である。将来再びラナプラザの事故が起こることを防ぐには、それ以外の道がないことを彼らは分かっている。例えば今年初め、ダッカの縫製工場が火事になったが、もし火災発生が1時間遅かったら、工場は6,000人の労働者で一杯になっており、避難することはできなかったかもしれない。

ラナプラザの事故の後、待ち望まれていた「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関する協定」がわずか1週間で調印された。これは、工場の状態に関して、ファッション業界が初めて直接的な責任を認めるものとなった。しかし、法的拘束力をともなうこの協定も、その成否にかかわらず2018年末までとなっている。その成功の鍵は、工場を安全な場所にするために必要な改善を、今後2年間でブランド企業に約束させられるかどうかにかかっている。労働者たちは期待はしていない。彼らは、労働環境を向上させることができるのは、組織的に団結する以外にはないと力説する。ラナプラザが崩壊した日、そこで働いていた労働者たちは、壁に亀裂が走っているのを目撃してあわてて外に逃げ出した。しかし、戻って働くように命令されたのだ。個人では拒否するにもわずかな力しかなかったが、労働組合を結成していれば上司の命令に抵抗することができたかもしれない。工場に戻った労働者たちは、その1時間後にがれきの下敷きとなった。

2013年7月、バングラデシュは労働法を改正した。それは、労働組合の結成をかなり容易にするものだったが、労働組合の公的な承認と登録に必要な工場労働者の加入割合(組織率)は30%以上という要件は残された。労働組合結成への動きに対しては、労働者たちへの威圧と脅迫が広く行われるため、この30%という割合は非常に厳しいものである。特に大きな工場では、1,000人を優に超える労働者の加入が必要で、困難を極めた。また、職場で労働組合を結成しようとする労働者の契約解除は日常茶飯事だった。

だが、過去3年で新たな労働組合が結成され、組合員数の増加も堅調だった。とはいえ、労働者の組合組織率はたった5%である。やはり、各地の労働組合が多くの労力を費やしていたのは、解雇された労働者の復職を求めた交渉であった。目の前にある残業の強制、賃金未払い、不衛生な飲料水、生産目標達成への過度の圧力といった問題よりも、組合のリーダーたちを守る活動に力を注ぐこともしばしばだった。

大きなリスクを伴う闘い

各工場の職場の組合代表のほとんどは女性だが、労働組合の代表者たちはほとんどが男性である。バングラデシュの縫製工場で働く労働者の85%は女性であり、この点から代表性の不均衡と代表者不足は問題を引き起こしている。つまり労働組合の問題が、女性の権利というよりも一般的な労働者の権利という視点でとらえられているのだ。女性は、労働環境から圧倒的な影響を受けているが、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)だけでなく、職場で雇用主から男性とは別の扱いを受けるという問題もある。「難しい業務を任されるのはいつも女性たちです」、とある女性は説明する。「男性たちは梱包作業で私たちよりずっと高い給料をもらっています。でも、私たちも懸命に働いているのです」

女性リーダーの必要性は、現在多くの組合の検討事項に含まれている。だがバングラデシュでは、父権社会という広く刻み込まれた文化に挑む必要があり、その変化は遅い。その対応としては、ジェンダーに対する意識向上や女性のリーダーシップに関するトレーニングから、重要な代表的地位(書記長や代表など)を女性に限定する労働組合の規則の改正までさまざまである。

これは、「女性のエンパワメント」ということではない。この言葉は、女性たち自身からパワーがわき起こるのではなく、女性たちにパワーを与えることを意味する。しかし現実は、危険を伴いながらも女性たちが自身の権利のために積極的に闘っているのだ。労働組合で中心となる女性、組合に加入する女性に対して工場所有者は、常套手段としてギャングを使っての暴行、殺害脅迫、性的な嫌がらせを行う。労働組合に加盟している女性の縫製工場労働者で、暴言を浴びたり、身体的あるいは性的な暴行を受けたことがない人を探すのは難しいくらいだ。このような侮辱や虐待があまりにも一般化しており、女性たちはそれを困難な闘いに伴うリスクの一部として受け入れているほどである。

これからの挑戦

世界はラナプラザの後、自分たちの衣服を作る工場の恐ろしい労働環境と世界的ファッションブランドとの関係に気づいた。しかしファッションブランド企業は、新たな工場崩壊の防止には労働組合結成が最善策であるにもかかわらず、組合結成の権利の否定に相変わらず大いに加担している。企業は、自社のサプライチェーンに含まれる工場の詳細について公開を拒否しているが、それは結局地域の労働組合が労働環境を調査し、その情報を企業と顧客への働きかけに活用することを妨げているのだ。H&Mやマークス&スペンサーなど、ほんの一握りの企業がサプライチェーンの情報を公開している。ただ、各工場での生産量は公開されていない。このことにより、工場で権利侵害が発覚した場合でも、ファッションブランドは常套句のように言う。その工場での総生産量に占める当社の生産量は少ないため、労働条件改善への当社の影響力は限定的なものだ、と。

組織化を進めようとする女性の縫製工場労働者が直面する、これまで見てきたような困難に加え、いわゆる「黄色組合」[訳注:急進的な赤色労働組合とは異なる企業に協調的、従順な組合のことで、御用組合、企業組合などとも呼ばれる]の存在が彼女たちの状況を一層困難なものにする。黄色組合は、工場が結成したり政党と関係したりしている組合で、労働者が権利のために闘うのを積極的に妨げることで、労働者自身の独立した代表制のある組合結成を不可能にする。偽って労働者を代表し、労働者たちが集団的な行動を起こすのを説得して止めさせ、労働者を真に代表する組合結成の可能性に気づかせないようにするのだ。

国際的な労働組合組織、例えばインダストリオールは、どのような組合が加盟しているのかもっと見定める必要がある。もし国際的組織が黄色組合の加盟を許せば、労働者を支援するという独立した労働組合の大いなる努力は台無しになる。ある労働組合員は、「黄色組合を正当化することで、国際的組織は各国の労働運動を汚すことになる」と説明した。最終的に労働者は、堕落した組合の悪評を知らしめる必要がある。

NGWFで辛抱強く女性の権利のために取り組むアリアは、連帯の必要性を強調した。「一緒に働き一緒に闘うことができなければ、組合の意味はありません」と彼女は言う。労働者にとって、組合を活用し組合が提供する支援や研修を受ける必要性は、非常に高い。自らの労働組合を通じて団結し、組織化され、研修を受けた繊維工場の労働者たちは、頼れる勢力になるかもしれない。いや、なるはずだ。◆

by トゥルシ・ナラヤナサミー
英国のNGO「ワー・オン・ウォント」のアジア太平洋担当の国際プログラム・シニアオフィサー。
http://www.waronwant.org


2016年9月号NI495p24-25「Out of the ashes of Rana Plaza」の翻訳です。c495-100.jpg



  1. 2016/10/05(水) 01:49:27|
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