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【翻訳記事】社会を刺激する人々:10歳のトランスジェンダー活動家チャーリー・ラウティアン-リッケルト


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パレードの先頭を行くチャーリー
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トランスジェンダーの権利のために声を上げ、私たちを勇気づけてくれる10歳を、シャン・グリフィスが紹介する。

びしょ濡れになったチャーリー・ラウティアン-リッケルトは、赤いオープンカーに乗ってオタワ・プライド・パレード2016の先頭を進んでいた。「あなたを愛している、チャーリー!」と叫ぶ多くの人々に向かって、チャーリーは熱心に手を振っていた。今年大活躍したチャーリーが参加したパレードは、激しい雨をものともせずに進んだ。

青い花柄のドレスを着たチャーリーは、彼女が自分で認識したようにどこから見ても少女に見える。しかし彼女は男児として生まれ、弱冠10歳にしてすでに一人前のトランスジェンダー活動家だ。

「私はただ、メッセージを伝えたいのです」と彼女は説明する。「LGBTQ[訳注:レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィアの頭文字で、性的マイノリティーを示す言葉]の周囲にいるそうでない人々の中には、LGBTQコミュニティーのことを本当に恐れていたり嫌っていたりする人がいくらかはいます。私たちがどんな人間なのかを知ってほしいし、私たちの近くでも快適に思ってもらえることを分かっ
て欲しいだけなのです」

聴衆への基調講演でチャーリーは語りかけた。「みなさん、私は私が大好きな人々、性の多様性を認めるコミュニティーを守りたいのです。私が感じているような幸せな気持ちを、彼らにも感じて欲しいのです。そして、いかなる性であろうとも、彼らは普通で、すばらしい贈り物であることを知ってほしいのです」

チャーリーは史上最年少でパレードのグランド・マーシャル[訳注:パレードの先頭を走る車から観衆に手を振る役割]という栄誉に輝いたが、この選択は当然のことだ、とオタワ・プライド・パレードの責任者のタミー・ドップソンは述べた。この役割は、「政策提言や教育を通じて彼らの暮らしを向上させて」彼らが十分に生活を楽しめるよう刺激を与えた人物に与えられることになっているのだ。

「彼女はただの10歳ではありません!」とドップソンは言う。「今後20年で彼女がどのような人物になるのか、私は楽しみです。彼女は10歳とは思えず、非常に落ち着いています。彼女は、彼女のような人々をより安心させ、孤独感を和らげています」

チャーリーへの注目は急上昇している。彼女は2年前、弱冠8歳の時に、カナダの上院議会で行われたトランスジェンダーの人々を差別とヘイトクライムから守る法案の議論の場に、両親に付き添われて参加した。しかし、米国でもそうだったように、カナダでもトイレをどうするかが政治的課題に浮上した。保守党が提出していた修正案は、トランスジェンダーの人々に対し、出生時の性別に基づいてトイレを使用するよう制限する内容だった。チャーリーは憤慨したが、人権NGOのアムネスティ・インターナショナル、ジェンダー・モザイク、その他のLGBTQグループの代表者たちと一緒
に座り、「オリンピックの時にするように聖火を掲げ、私の声を彼らの声に加えるようにと心を動かされました」という。

彼女は、カナダ議会前で行われた「オキュポッティー(Occupotty)」[訳注:occupy(占拠)とpotty(おまる)の造語]と呼ばれる抗議活動で、「私たちをトイレに行かせて」という歌を歌い、いくつもの便座が置かれた前に立って集まった人々に、トランスジェンダーにとってトイレの問題がなぜ重要なのかを語った。この抗議活動は全国的に注目を集めた。

トランスジェンダーの人々は、そうではない人々よりもトイレでは強い恐怖を感じる、とチャーリーは言う。「とても安全とは言えません。もし私が男子トイレに行ったら、『何なんだ、どうして女がここにいるんだ? 待てよ、これは絶好のチャンスだ』と思われてしまい、私は恐ろしい目に遭う可能性もあるのです」

彼女は、新しい法律がトランスジェンダーの人々に安心を与えるようなものになることを望んでいる。2016年5月、自由党の新たな司法相でチャーリーの側に立つジョディ・ウィルソン-レイボールドは、トランスジェンダー差別禁止法の導入を再び目指すことに決めた。ウィルソン-レイボールド司法相はチャーリーにとって心強い新たな政治的協力者で、10歳の彼女のことを「その年齢以上に賢い」と述べた。一方チャーリーはウィルソン-レイボールド司法相について、「国会議員の親友」と言った。

もちろん彼女は、この活動が家族の支援無しにはできないことを理解している。

「私たちは娘がいじめの一番の標的になることは望んでいません」と母親のアンは言う。小学校や住んでいた地方のコミュニティーでいじめに遭い、家族はオタワに引っ越した。オタワでは、チャーリーが受け入れられるだけでなく、成長できる学校を見つけた。アンは現在、チャーリーをガールスカウト、ヒップホップダンス、スケートボードイベント、キャンペーン活動に送り迎えするため、忙しい毎日を過ごしている。

オタワでは、若者のホームレスの半分がLGBTQで、彼らは路上生活を送っている。その理由は、彼らが家族から拒絶されていると感じているからである。チャーリーはこの統計データを強く意識している。

「オタワの[トランスジェンダーの]子どもの43%が自殺を考えたことがあるのです」と彼女は言う。「私は幸運な方なのです。現在発せられている、すべての声なき声のために、私は声を上げていきます」◆

シャン・グリフィス
オタワを拠点に仕事をするフリーランスのラジオとネットのジャーナリストで、ドイツ国立放送局、ドイチェ・ヴェレ(ドイツの国際放送局)、BBC、ガーディアン紙、クリスチャン・サイセンス・モニター紙などの仕事を行っている。


2016年11月号NI497p33「Making Waves:Charlie Lowthian-Rickert」の翻訳です。c497-100.jpg



  1. 2016/11/30(水) 01:18:01|
  2. 市民・ムーブメント