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【翻訳記事】課税逃れの偽装ゲーム


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租税回避はいくつもの対象地が関係する世界的なシステムによって行われており、金融分野での隠蔽と改ざんが何重にも行われる。今回はその対象と、誰が得をして誰が被害を被っているのかを見ていこう。

●米国
米国の資金が海外に流出するのを食い止めるために、米国は自らを最も重要な租税回避地のひとつとして作り上げた。巨大な金融産業は海外資本へ0%課税としており、汚れた資金を磁石のように引きつけてきた。デラウェア州、ワイオミング州、ネバダ州など州法が緩い州では、匿名のペーパーカンパニーの設立は容易である。

●グアテマラ
2013年グアテマラは、資金が違法に海外流出して25億ドル以上を失った。これは、教育分野の公的支出額合計よりも10億ドル以上多い額である。

●パナマ
悪名高い弁護士事務所モサック・フォンセカが拠点を置くパナマは、秘密主義を改めるよう国際社会から圧力を受けるが抵抗し続けている。パナマには現在、35万社の匿名のペーパーカンパニーが登録されており、海外企業は資金を上限なくパナマ国内に移すことができ、税金を払う必要もない。パナマ文書発覚時の改革の試みは、パナマ政府調査委員会のメンバーに就任したノーベル経済学賞受賞の経済学者ジョセフ・スティグリッツが透明性不足に業を煮やして辞任し、機能していない。

●ケイマン諸島
ケイマン諸島は、世界で6番目に大きな金融センターで、その金融資産は1.4兆ドル以上である。11万以上の投資ファンドが拠点を置き、そこには世界のヘッジファンドの半数近くが含まれている。ケイマン諸島の米国の投資額は、中国経済よりも大きいと考えられている。秘密主義に関する法律は非常に厳しく、場合によっては銀行の情報を尋ねるだけで投獄される可能性もある。

●英領バージン諸島
この国の企業登録数は、国民1人あたりに換算すると16社となる[訳注:日本の場合、2015年の商業・法人登記を参考にすると1人あたり0.02社程度]。この小さな海外領土は、世界でも最も簡単に匿名ペーパーカンパニーの登録が可能な国のひとつだ。緩い法律と余計な質問はしない方針の登記法は、実際に利益を得る人々が表面的なダミーを立てて隠れることを容易にする。

●アイルランド
法人税を1桁台に下げる移転価格[訳注:親会社と海外関連会社間の取引価格を操作して、税率の低い国への利益移転を図る]の大胆な形である「ダブル・アイリッシュ」で有名なアイルランド。この国は、アップル、フェイスブック、グーグルといった米国のIT大手のお気に入りである。アップルの低税率をめぐって先日起こった欧州連合(EU)との争いは、法人税回避企業の今後に影響をおよぼす可能性もある。

●ロンドン
ロンドンでは、金持ちの租税回避者たちが資金を隠すために不動産を利用しており、住宅価格が高騰している。市場が好調で固定資産税も低いため、違法な資金を一時的に置いておくには好都合な場所だ。現在平均住宅価格は平均年収の14倍になっている。

●ロンドンのシティ
[訳注:シティは現在金融街として知られるが、古くから商業と金融の中心として役割を担い自治権を有し、現在もロンドン市長とは別に独自の市長がいる。市長は経済・金融に関して独自の外交も行っている。]
王室属領[訳注:英国王室に属するが高度な自治権を持つ地域]と海外領土のネットワークの中心となっている。シティは、世界の大手金融機関の関心事に沿って物事が進むよう後押ししていくことが公式な務めとされている。オフショア[訳注:本国からの規制を受けない海外での金融取引]の世界が活発であり続けるよう「金融の自由」を確保するために、自らが持つ特別な法的特権を使って粘り強いロビー活動を行う。

●ルクセンブルク
ヨーロッパではスイスに次ぐ規模を持つ租税回避地である。緩い金融規制と低い法人税によって、ペプシコやウォルマートといった特に多国籍企業に人気がある。キャピタルゲイン[訳注:土地、債券、株式などの売却益のこと]への税率が低く、配当に対しては非課税であるため、この国はヨーロッパにおける投資ファンド(2兆5,000億ドルという膨大な資産を運用)の中心拠点となっている。

●スイス
改革の圧力にもかかわらず、スイスは依然として金融秘密主義の牙城で、開発途上国からの不正資金のお気に入りの目的地のひとつとなっている。専門家は、2兆3,000億ドル(全オフショア資産の大体3分の1)が、秘密主義のスイスの民間銀行に預けられていると推測している。

●ウガンダ
2010年の税金スキャンダルは、ウガンダの始まったばかりの石油産業を揺るがした。その原因は、英国資本のヘリテージ・オイル・アンド・ガスが、ウガンダの油田を売却した際に4億3,400万ドルの支払いを免れるため、住所をバハマからモーリシャスに移そうとしたためだ。この額はウガンダの1年間の税収の約5分の1に相当するが、長い法廷闘争の末にその一部がようやく支払われた。

●ザンビア
鉱物資源が豊かなザンビアでは、鉱山企業が移転価格スキームを使って税務当局の目をごまかしている。企業の課税逃れにより、ザンビアは年間20億~30億ドルの損失を被っており、それはおよそGDPの10~15%にあたる。国民の74%が1日1.25ドル未満で暮らしているこの国で、その失われた資金があれば、問題を抱える学校と保健医療について政府予算を倍にすることもできたかもしれない。しかしその代わりに、グレンコア[訳注:資源、農業の分野で生産、販売、投資を行うスイスの企業]やベダンタ[訳注:英国の資源会社]、あるいは他の企業の株主のポケットを膨らませることになった。

●ロシア
ロシアの金融資産の半分以上にあたる約2,000億ドルが海外に隠匿されているため、年間10億ドルの税収を得ることができない。租税回避は、特に政治エリートの間でよく行われている。プーチン大統領を含む政府高官の親類や知り合いたちは、オフショアの熱心な利用者である。

●中国
オフショアの対象国としては世界最大規模で、2001年から少なくとも1兆ドルの資金が違法に国外に流出している。これは、習近平国家主席の親類を含む国のエリートたちが、中国税務当局の目の届かないところに資産を移しているためだ。

●香港
自国の税務当局の目を逃れたいアジア資本の集積地として急成長している香港は、厳格な秘密主義の法律と金融規制には無干渉主義で通すという2つの特徴が相まって、汚れたカネを引きつけてきた。香港は、中国本土からの汚れたカネを、外国資本として装って再度中国本土に投資する「ラウンドトリッピング」という手法で知られている。


2016年12月号NI498p24-25「The dissimulation game」の翻訳です。c498-100.jpg





  1. 2016/12/30(金) 02:10:34|
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