NIジャパンブログ

【翻訳記事】報道されなかった2016年


26863509860_7162d14ec2_z.jpg
Thijs PaanakkerCC BY 2.0
アムステルダムのアイ湾で会話をする人たち
「人間社会のどんな問題であっても、解決のための最良の方法は、すべての当事者が座って対話をすることである」
ダライ・ラマ
このダライ・ラマの言葉は上の写真の引用元にあった言葉ですが、2017年はこの言葉が特に実践されることを望みます。



※あまり報道されなかった2016年のニュースを取り上げています。各ニュースの写真は、こちらの英語ページに掲載しています。


アフリカ Africa

◆南アフリカ South Africa
写真は、麻酔薬を打ったクロサイを横たえるところで、クラークスドロップ郊外の農園で慎重に行われていた。密猟を防ぐために、これから角を切断するのである。密猟数は減少し、この対策の効果は現れている。2016年の1月から7月の間に発見されたクロサイの死がいの数は702体で、昨年同時期は796体だった。しかし環境省の調査によれば、ゾウの密猟が増えたという。2016年1月から7月までの間に密猟容疑で414人が逮捕された。

◆モロッコ Morocco
この高齢の女性は、スペインの小さな飛び地領土メリリャから国境を越えてモロッコへ向かう。彼女は、背中に商品を背負って毎日売りに行く何千という行商人のひとりだ。中には、80キログラムもの荷物を背負う行商人もいる。彼らにとって国境越えはたやすいことである。このようにして越えていけば非正規の取引ができ、関税の支払いを免れることできる(「個人の荷物」であれば運び込みは合法である)。しかし難民が国境を越えることはほとんど不可能だ。2016年にスペインは、庇護を求めてやってくる人々がこの北アフリカの飛び地からEU(欧州連合)に到達することを防ぐため、警備を強化した。メリリャは現在10メートルのフェンスと堀に囲まれ、警備員が配置されている。

◆ガボン Gabon
すでに見た光景? 選挙後の9月、2009年の選挙後と同じ状態が繰り返されたガボン。今回は現職のアリ・ボンゴが獲得票の割合で1%に満たない僅差で再選を決め、その後に政府に対する抗議活動が勃発。対立候補のジャン・ピンの支持者と警察が衝突した結果、首都リーブルヴィルにある議会の内部は写真のように黒焦げとなった。衝突で3人が殺され1,000人以上が逮捕された。選挙を監視していた複数の海外組織はこの選挙を批判し、ボンゴは資金とメディアをより有利に活用して役立てたと述べている。


ヨーロッパ&中央アジア Europe & Central Asia

◆ベラルーシ Belarus
子どもたちは、リハビリテーション・保健センターで理学療法を受けている。場所は、1986年のチェルノブイリ原発事故によって汚染されたミンスクの郊外だ。ユニセフ(国連児童基金)によれば、原発事故後に生まれた子どもは、放射能降下物が原因で、甲状腺がんにかかりやすく、その他さまざまな健康問題も引き起こしやすい。事故から30年を迎え、リトアニアとの国境沿いに建設中の原子力発電所に対して怒りが広がっている。政治家のミカライ・ウラセヴィッチは報道陣に、政府は「火葬場を建設している」と述べた。

◆トルコ Turkey
4月、イスタンブールの主にクルド人やアレヴィー人が住む地区に、民兵組織が現れた。その地区では、政府の少数民族への対応を非難するデモが定期的に行われている。2016年、エルドアン大統領のクルド労働者党に対する取り締まりは、一層厳しいものになっていった。エルドアン大統領は5月、30年以上に及ぶクルド人独立に向けた戦いの終結を目指して2012年に始まった和平交渉について、再開はないだろうと述べた。彼は、「反逆者の最後の一人を殺すまで」軍事行動を続けるだろうと語った。

◆ウクライナ Ukraine
アゾフのサマーキャンプでの一コマ。子どもたちは胸の前に腕を水平に掲げ、「ウクライナ、英雄の聖なる母、私の心に宿る…。あなた方、聖なる人々、私の命と喜び」と歌う。政府と親ロシア派反政府軍との戦いが続く中、次の世代の兵士たちは戦いの準備を行っている。8月のこのキャンプには、8歳から16歳の50人の子どもたちが参加し、武器の扱い方や撃ち方を学んだ。彼らは戦闘状況に沿ったサバイバルトレーニングと戦術的な知識も学んだ。今も続く戦いによる死者は、11月までで合計9,700人に上る。


アメリカ大陸 Americas

◆米国 United States
若い住民が木道に座っている。この写真は、2016年7月にアラスカの先住民が暮らす村ニュウトックにて撮影された。米国の北部遠隔地域のほとんどを覆っている永久凍土は、気候変動の影響を受けて溶け続けている。永久凍土が溶けるにつれ、地盤沈下が起こり道路や建物が損傷し、溶けた土壌からは大量の温室効果ガスが放出される。ニュウトックの住民350人は、2013年に移住する予定だったが、地元での政治的な争いで計画は中止となった。村で最も高い場所には小学校があるが、2017年末にはそこも海面下に沈む可能性がある。

◆キューバ/コスタリカ Cuba/Costa Rica
パソカノアスにたどり着いたキューバ移民のカップルが、一時的なシェルターのテントで休んでいる。今年初め、米国へ向かう8,000人ほどのキューバ人が、ニカラグアの通過許可を待ってコスタリカで足止めされた。現在米国の法律には、米国にたどり着いたキューバ人は、在留する権利があるとうたわれている。しかし、ドナルド・トランプが大統領に就任すれば、この権利に異議を唱えることになりそうだ。2月にトランプは、1996年のキューバ人地位調整法に基づいたキューバ人への特別な上陸許可は「誤り」である、とリポーターたちに語った。彼は11月のカストロの死去から数日のうちに、このカリブ海の島に再び制裁を科すと脅しをかけた。

◆チリ Chile
1973年の軍事クーデターの記念日である9月に行われたデモで、機動隊員の目をにらみ付けるデモ参加者。この写真はSNSで広まり、少女の果敢な反抗的態度に、1989年の天安門事件の時に戦車の前に立ちはだかった男性を思い出すというコメントも見られた。しかし2016年チリ人たちは、ほかにもさまざまな理由で町に出て抗議を行った。例えば、学生たちは教育改革を求め、タクシーの運転手たちはオンデマンド配車サービスのウーバーに抗議し、漁師たちは海産物を汚染したアオコの「赤潮」への対策を政府に求め、多くの人々が年金制度について怒りの声を上げた。


南アジア South Asia

◆インド India
再利用可能な物をゴミの中から拾う子どもの写真は、ハイデラバードのゴミ処分場で2016年10月に撮影された。その同じ月、ビジャヤワダの町では行政と議員が膠着状態に陥り、ゴミ回収がストップし、ゴミが町の至る所でうずたかく積まれた。だがこれはこの国のゴミ危機の氷山の一角でしかなかった。インドでは毎日14万トンのゴミが出るが、その多くが埋め立て処分場に運ばれる。回収されるゴミは83%だけで、処理が行われるのはそのうちの29%のみである。1月には、18階分の高さに達したムンバイの埋め立て処分場が火事になり、発生した大量の煙は宇宙からも見えるほどだった。

◆カシミール Kashmir
このスリナガルの病院にいた男性は、警察と抗議参加者の間で起こった7月の衝突で負傷した。カシミールの分離を目指すヒズブル・ムジャヒディンの司令官ブルハーン・ワニがインドの治安部隊に殺された後、カシミールでは暴力と不安定な状態が最悪のレベルに達している。この殺人の結果抗議活動が広がり、インドのザ・タイムズ紙によれば、85人が死亡、1万3,000人の抗議参加者と400人の治安当局者が負傷した。このインド支配地域では7月に夜間外出禁止令が出され、11月現在でもいくつかの地区でその制限が続いている。

◆バングラデシュ Bangladesh
75歳のモイン・ミアッが、なくした所有物を探すためにバナナヤシの幹につかまって水に浮かんでいる。7月と8月、バングラデシュ北部と中部はモンスーンの洪水に見舞われ、数百万人が影響を受けた。少なくとも25万軒が被害を受け、1万7,000軒は完全に流されてしまった。災害によるリスクを、脆弱性と自然災害(台風、干ばつ、地震、洪水、海水面上昇)の発生を掛け合わせて計算する『世界リスク報告書2016』によれば、世界で一番リスクが高い国はバヌアツで、その次は、トンガ、フィリピン、グアテマラと続き、バングラデシュは世界で5番目となっている。


東アジアと太平洋 East Asia & Pacific

◆ソロモン諸島 Solomon Islands
オントンジャワ環礁にあるガダルカナル島のロード・ハウ居住地の住民たちが浜辺に集まっている。この居住地は、高潮や海水面上昇の影響を受けやすく、住民は現在首都ホニアラへの移住を検討している。しかしコミュニティーのリーダーたちは、69の現地語(それに加え、人口の2%しか使っていない公用語の英語と、共通語となっているソロモン英語がある)の中でもオントンジャワ語は2,400人しか使用しておらず、次の世代が先祖代々の土地と無関係な新たな場所で育っていけば、自分たちのポリネシ人としてのアイデンティティーと母語が失われてしまうことを危惧している。

◆スリランカ Sri Lanka
カルピティヤでマングローブに植える苗木を運ぶ自然保護事業の作業者たち。これは、1万5,000ヘクタールのマングローブ林を保護するという壮大な計画の一環だ。汽水域に生えるマングローブの樹木は、土地の保護と生成に役立ち、炭素を吸収して温暖化の影響を緩和する。また、2004年にスリランカの東岸が津波に襲われた際の状況が示すように、自然災害による打撃を和らげる効果がある。それ以来マングローブは保護地域に指定され、樹木を伐採した場合は刑罰を科すことが可能になった。2016年7月マイトリーパーラ・シリセーナ大統領は、スリランカ初のマングローブ博物館を開館した。

◆タイ Thailand
無情な政権である。写真は、7月に撮影されたバンコクにある重警備のクロンプレム刑務所の屋外での運動の時間だ。2016年10月現在、タイの受刑者数はあとわずかで30万人に達するところまできており、人口10万人あたり443人であった(10万人当たりカナダは114人、米国は693人)。受刑者たちは公式には収用定員が合計で21万7,000人となる114カ所の刑務所に詰め込まれている。パイブーン・クムチャヤ法相は7月、政府の麻薬に対する厳格な法律がうまくいっていないことを認めた。また彼は、メタアンフェタミンをカテゴリー1薬物からグレードを下げるとともに、麻薬売人あるいはより一般的な薬物所持で逮捕された者の刑期の短縮を望んでいると語った。


中東 Middle East

◆レバノン Lebanon
11月、人々が待ち焦がれていた雨が降ったレバノン南部で、腐ったオレンジに乗ったカタツムリ。3月にNASA(米航空宇宙局)は、1998年から続く地中海東部の干ばつが引き続きキプロス、イスラエル、ヨルダン、レバノン、パレスチナ、シリア、トルコに影響を与え、状況は過去900年で最悪であるとことを明らかにした。科学者らは樹木の年輪(干ばつの年は幅が狭くなり、水が豊富な年は広くなる)を調査し、現在の干ばつに関しての評価を行った。その結論は、報告書の主要著者ベン・クックによれば、これには「ある種の人間が原因となっている気候変動の影響が見られる」という。

◆イエメン Yemen
フーティー信奉者の3月集会で、テントの隙間から様子をうかがう女性。集会は、イエメンの首都サヌアにサウジアラビア主導の空爆が行われていることに対して、抗議する目的で開かれた。フーティーの情報源がアル・アラビヤ・ニュース・チャンネルに語ったところによれば、初めてとなる女性の民兵部隊が9月に結成されたという。イエメンの女性は長い間、差別と暴力に直面してきたが、内戦は彼女たちをよりぜい弱な立場に追い込んでいる。UNFPA(国連人口基金)は、2016年1月から9月の間に、性別に基づく暴力が8,031件報告されたと伝えている。だが、女性がそのような暴力を報告することを妨げる社会的な規範が存在するため、実際の件数はずっと高いと考えられる。

◆パレスチナ Palestine
忍者スタイル。2014年にイスラエルによって破壊されたガザ地区のビルのがれきの前で、パレスチナ人の若者が手に刀を持ってジャンプし、その技能を披露している。地元の武術クラブで2年間の訓練を受けた若者たちがチームを作り、定期的に公演を行うことを決めた。彼らは、有名になっていつか誘いを受けて国際的なコンテストに参加することを望んでいる。2016年、パレスチナの若者の失業率は42%に達しており、多くの若者が貧困に陥り挫折感を抱えている。

この記事は、The Unreported Year 2016の翻訳です。


  1. 2017/01/22(日) 23:25:23|
  2. 国・地域