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【翻訳記事】アフリカで最も才知あふれる若き発明者たち


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画像をクリックするとNIの英語記事のページが開きます。各発明者の写真のキャプションは次の通りです。
写真1枚目:ケニアのキスムにある、トゥクトゥクを電動車にする作業場の予定地を訪れたアレックス・マカリワ。
写真2枚目:エドウィン・インガンジは、ユーザーを効果的で効率的な緊急サービスに迅速につなぐ、ウサラマというモバイルアプリを開発した。
写真3枚目:ジェームズ・ヴァン・デ・ウェルトと彼が開発した箱の中のオフグリッドの電気供給システム「ソーラー・タートル」
写真4枚目:ジェームズ・ヴァン・デ・ウェルトのソーラー・タートルのバッテリーには、リサイクルのボトルが使われている。
写真5枚目:ピーター・ミリアが手にしているのは、彼が開発している階段を上るEコン車いすの小型化した試作機。
写真6枚目:工学イノベーション・アフリカ賞コンテストへ寄せられたモデルや機器。



階段を上る車いすや電動トゥクトゥク[訳注:東南アジアなどで使用されている三輪自動車で、通常はガソリンを燃料とする]は、コミュニティーが直面する課題に地元エンジニアたちが示した答えである。ローレンス・イヴィルの報告。

「999」[訳注:ケニアの警察通報用電話番号]に電話しても、誰にもつながりません」、とエドウィン・インガンジは嘆く。この22歳のケニア人は2014年後半、学校からの帰り道にナイロビで武装強盗に襲われながらも生き延びた。「みんなただ我慢していますが、限界です」

エドウィンは、工学イノベーション・アフリカ賞の候補者として残った16人の技術者のひとりだ。最終選考に進んだ彼らは、2016年11月にロンドンのショーディッジに集まり、自らの経験を熱く語り合い、それぞれが挑んでいるさまざまな取り組みについて議論した。

 困難な環境でも積極的に

エドウィンは、ウサラマというモバイル用アプリを開発した。それは、機能しないケニアの999に対する解決策として、犯罪率の高い地域のユーザーに緊急通報機能を提供するものだ。スマートフォンをシェイクする(振る)と、家族、友人、地域の救援サービスなどに通報者の居場所が伝わり、対応を可能にする。ケニアのモバイル普及率は88%で増加中だ。スマホは4人に1人が持っている。だがエドウィンの望みは、さらにその先をとらえている。「たとえアプリやスマホを持っていない人でも緊急通報を発すれば、それがショートメッセージとして送信されるようにする、というのが私たちの計画です」、と彼は言う。

治安に対する人々の不安に取り組むのは、エドウィンだけではない。工学技術者、ジェームズ・ヴァン・デ・ウェルトの夢は、電気がない南アフリカの地方村落にグリーン・エコノミー[訳注:持続可能な発展を実現するために必要な、環境に優しい経済]を導入することだ。彼が具体的に犯罪に注目するようになったのは、地方村落の学校を訪れた時だった。訪問した12校のうち、11校がソーラーパネルの盗難に遭っていたのである。

彼はヨハネスブルグのことを「世界の犯罪のメッカ」だと言う。そんな町で輸送用コンテナを金属製金庫として使用している業者からヒントを得て、彼は「ソーラー・タートル」という小型移動発電所を考案した。これは、輸送用コンテナ内に電池の入ったリサイクルボトルを置き、それをソーラーパネルで充電するもので、日中はコンテナの外で広げるソーラーパネルを、夜は安全にコンテナ内に格納する。

人々はタートルから電池入りボトルを回収し、それを自宅のシステムにつなげて利用する。 電気がなくなったら充電済の交換用電池を買えばよい。

投資家も地域住民も、犯罪多発地域で機能するイノベーションとして、ウサラマとソーラー・タートルを歓迎した。

 民間市場に賭ける

これら起業家たちの話を聞き、アフリカを席巻する技術革命をたたえるのは容易なことだ。しかし彼らの技術は、投資や支援無しには実現できず、それらを得るのは容易ではないことを誰もが理解している。

多くのアフリカの起業家たちの前に立ちはだかるのが、資金不足、頻発する犯罪、汚職、不安定な政治である。政府による調達(購入)がない場合、多くの発明者たちは自らの社会的イノベーション進めていくために、民間セクターの利用を試みている。

関連記事What will it take to bring electricity to Africa’s poor?(アフリカの貧困層に電気を届けるには何が必要か?)

その好例が、ピーター・ミリアのEコン車いすだ。電気電子廃棄物から作られた彼の発明品は、階段を上り、道路以外の場所も走り、ユーザーを直立させることができ、さらには車いすの機能としては意外なデータ処理ツールにもなる。

その車いすによって、ケニアで障がい者登録をしている150万人が職場に溶け込み、偏見と闘う一助になることを、ピーターは望んでいる。

一方で彼は、Eコン車いすを健常者向けに販売することにも挑戦する。高性能仕様の車いすへの出資者を集め、それを幅広いコミュニティー向けの標準仕様の車いすのコストダウンにつなげようと計画している。

エドウィンも、ウサラマに関して同じような方策をとる。彼のチームは警察や州当局の協力を得ようと働きかけていたが、官僚主義と腐敗に阻まれてからは、警備会社への足がかりを得るため、関係企業と深いつながりのあるケニア警備安全協会(Prosak)と提携した。

エドウィンもピーターのように、やがては貧困層や弱者にも彼のアプリが広がることを期待している。「ひとたび民間の警備会社と手を組めば、政府にその方式の採用を説得する強力な根拠になります」、と彼は言う。

 システムを変える

ケニアの別の有力な候補者に、アレックス・マカリワがいる。大胆なビジョンを持ちながらも語り口は穏やかな青年で、ナイロビの運輸業界において重要な部分を担うトゥクトゥクに革命を起こそうとしている。彼が使用するは、オフグリッド[訳注:電力会社などが電気を供給する送電網から独立している状態]のソーラー充電ステーションのネットワークから動力を得る新型電動車両だ。

「私たちのトゥクトゥクは、日々の使用において、従来のトゥクトゥクよりも運用コストが30~70%安くなることが分かっています。クザ・オートモーティブの基本方針は、持続可能な輸送をもっと使い易くすることです」、とアレックスは述べた。クザにはその電動トゥクトゥクを量産する力はまだないが、需要増加によって販売価格が下がることを期待している。

電動トゥクトゥクの主な課題のひとつが充電時間だ。インフォーマル経済[訳注:定義はさまざまだが、一般的には主に開発途上国で多く見られる経済のことで、政府の管理や規制の影響が少なく公式経済統計にも含まれない露店、行商、廃品回収などから成る経済のことを指す]で働く運転手には、6~8時間の充電時間を待っている余裕がない。アレックスの解決策は簡単だ。「バッテリー切れが近づいたら、残りのバッテリーで数キロ以内にあるカズ充電ステーションまで走り、そこで空になったバッテリーと新しい満タンのバッテリーを交換します」

アレックスは、「アフリカでは電気を得ることが大変大きな問題である」ため、電気を動力源とした輸送手段の大規模な採用については見通しが立っていないことを認める。それでも適切な支援さえあれば、人々は喜んで変化を受け入れるだろうと楽観的だ。

「私たちは、単なる操業したての小さな会社にすぎません。人々の啓発は政府の役割です。政府が持続可能な輸送だけでなく、環境にやさしい技術全般を明確に支援しているところでは、物事は飛躍的に進みました」

 「向上させていくのは私の役目」

彼らの地域社会が直面する喫緊の課題への挑戦について、幻想を抱く候補者はひとりもいない。地域での調達、政府支援、幅広い持続可能な考え方が無ければ、これらイノベーションの多くはとん挫してしまうだろう。

しかしアフリカの若い起業家たちにとって、冷淡な環境や不十分なインフラは、技術的創造力の障壁ではない。

アレックスが、「世の中には先進国と途上国という物差しがあり、人々はそれに従って国を認識する」と端的に言い表しているが、しばしばこれが、リードするグループと後に従っていくグループ、という話を作り上げる。

「しかし私は脳みそを持った人間です。現実に問題のある場所に暮らしているからこそ、私が実際に向上させて解決策を推し進める役を担うのです」

関連特集:2016年5月号メイン記事「人間中心のテクノロジーとは」

工学イノベーション・アフリカ賞は、ロイヤル・アカデミー・オブ・エンジニアリングが創設し、自分たちの地域社会が抱える問題の解決策の開発に向け、サハラ以南のアフリカ諸国のあらゆる分野の技術者の育成を促進する。

アフリカ賞は、アフリカ大陸中から有能な革新的技術者を選び、訓練やアドバイスを行い、素晴らしいアイデアを持つ技術者が起業家として成功するよう支援している。

Africa Prize for Engineering Innovation

by ローレンス・イヴィル

NIブログ記事Meet Africa’s brightest young inventors の翻訳です。

翻訳協力:斉藤孝子



  1. 2017/02/04(土) 00:08:20|
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