NIジャパンブログ

【翻訳記事】排ガスをインクに

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デリー(インド)の大気汚染
Dave MorrisCC BY 2.0


シンガポールとインドを拠点とする技術系ベンチャー企業が資金を募り、大気汚染をインクに変える技術を開発した。この企業は、急成長を遂げるアジアの都市での大気汚染による死亡者を減らしたいと考えている。このグラビキー社は、「汚染物質を芸術のツールへと用途を変更する」ものだと説明する。これは、自動車や発電機のマフラーや排気パイプに取り付る装置によって、排出されるばい煙(すす)を回収するものだ。回収されたすすは、有害金属と発がん性物質が除去された後に炭素色素が抽出され、インクと塗料に生まれ変わる。

グラビキー社のサイト http://www.graviky.com

2017年6月号NI503 p9 Exhausting inkの翻訳です。c503_100.jpg



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  1. 2017/07/05(水) 23:23:55|
  2. ビジネス・企業

【翻訳記事】フィランソロキャピタリズムに気をつけろ(援助)


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画像をクリックすると、本記事のもとになったランセット誌の論文"The black box warning on philanthrocapitalism"のページが開きます。


2016年9月、Facebookの創設者であるマーク・ザッカーバーグは、2100年までに「すべての病気を治療、予防、そしてコントロールするために」30億ドルを投資すると発表した。グローバルな保健分野への新規参入者となる通称「フィランソロキャピタリズム」[訳注:企業による社会貢献活動のことを指す「フィランソロピー」と「キャピタリズム(資本主義)」の造語]は、世界の貧困層に必ず恩恵をもたらすものなのだろうか? ジョカリン・クラークとリンゼイ・マッギーは、11月号のランセット誌[訳注:世界でも評価の高い学術的な医学専門誌]でいくつもの懸念を示した。

一つ目は、フィランソロキャピタリストの説明責任が、多くの場合不十分であることが分かったということだ。たとえばザッカーバーグは、彼の資金を民間企業を通じて流している。だがその企業は、慈善事業を規制する法律の対象外で、営利目的の事業に投資することも可能な上、彼が個人的な目的追求のために利用することも規制されず、カネの流れを公にする義務もない。

二つ目は、資金提供者の基金が、課税を免れることができる点だ。これは国庫からの収奪となる。現在、政府の責務が民間財団に移行されてしまい、国が援助への参画から手を引いていくという流れが懸念されているが、それを加速させるものである。

最後に、その論文の執筆者たちは、選挙で選ばれていないフィランソロキャピタリストたちが、世界の保健と開発の政策に関する意思決定に影響を及ぼすことを危惧し、より強力で独立した監視を求めている。◆


2017年1/2月合併号NI499p9 Beware philanthrocapitalism (AID) の翻訳です。c499-100.jpg



  1. 2017/02/28(火) 22:52:53|
  2. ビジネス・企業

【翻訳記事】アフリカで最も才知あふれる若き発明者たち


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画像をクリックするとNIの英語記事のページが開きます。各発明者の写真のキャプションは次の通りです。
写真1枚目:ケニアのキスムにある、トゥクトゥクを電動車にする作業場の予定地を訪れたアレックス・マカリワ。
写真2枚目:エドウィン・インガンジは、ユーザーを効果的で効率的な緊急サービスに迅速につなぐ、ウサラマというモバイルアプリを開発した。
写真3枚目:ジェームズ・ヴァン・デ・ウェルトと彼が開発した箱の中のオフグリッドの電気供給システム「ソーラー・タートル」
写真4枚目:ジェームズ・ヴァン・デ・ウェルトのソーラー・タートルのバッテリーには、リサイクルのボトルが使われている。
写真5枚目:ピーター・ミリアが手にしているのは、彼が開発している階段を上るEコン車いすの小型化した試作機。
写真6枚目:工学イノベーション・アフリカ賞コンテストへ寄せられたモデルや機器。



階段を上る車いすや電動トゥクトゥク[訳注:東南アジアなどで使用されている三輪自動車で、通常はガソリンを燃料とする]は、コミュニティーが直面する課題に地元エンジニアたちが示した答えである。ローレンス・イヴィルの報告。

「999」[訳注:ケニアの警察通報用電話番号]に電話しても、誰にもつながりません」、とエドウィン・インガンジは嘆く。この22歳のケニア人は2014年後半、学校からの帰り道にナイロビで武装強盗に襲われながらも生き延びた。「みんなただ我慢していますが、限界です」

エドウィンは、工学イノベーション・アフリカ賞の候補者として残った16人の技術者のひとりだ。最終選考に進んだ彼らは、2016年11月にロンドンのショーディッジに集まり、自らの経験を熱く語り合い、それぞれが挑んでいるさまざまな取り組みについて議論した。

 困難な環境でも積極的に

エドウィンは、ウサラマというモバイル用アプリを開発した。それは、機能しないケニアの999に対する解決策として、犯罪率の高い地域のユーザーに緊急通報機能を提供するものだ。スマートフォンをシェイクする(振る)と、家族、友人、地域の救援サービスなどに通報者の居場所が伝わり、対応を可能にする。ケニアのモバイル普及率は88%で増加中だ。スマホは4人に1人が持っている。だがエドウィンの望みは、さらにその先をとらえている。「たとえアプリやスマホを持っていない人でも緊急通報を発すれば、それがショートメッセージとして送信されるようにする、というのが私たちの計画です」、と彼は言う。

治安に対する人々の不安に取り組むのは、エドウィンだけではない。工学技術者、ジェームズ・ヴァン・デ・ウェルトの夢は、電気がない南アフリカの地方村落にグリーン・エコノミー[訳注:持続可能な発展を実現するために必要な、環境に優しい経済]を導入することだ。彼が具体的に犯罪に注目するようになったのは、地方村落の学校を訪れた時だった。訪問した12校のうち、11校がソーラーパネルの盗難に遭っていたのである。

彼はヨハネスブルグのことを「世界の犯罪のメッカ」だと言う。そんな町で輸送用コンテナを金属製金庫として使用している業者からヒントを得て、彼は「ソーラー・タートル」という小型移動発電所を考案した。これは、輸送用コンテナ内に電池の入ったリサイクルボトルを置き、それをソーラーパネルで充電するもので、日中はコンテナの外で広げるソーラーパネルを、夜は安全にコンテナ内に格納する。

人々はタートルから電池入りボトルを回収し、それを自宅のシステムにつなげて利用する。 電気がなくなったら充電済の交換用電池を買えばよい。

投資家も地域住民も、犯罪多発地域で機能するイノベーションとして、ウサラマとソーラー・タートルを歓迎した。

 民間市場に賭ける

これら起業家たちの話を聞き、アフリカを席巻する技術革命をたたえるのは容易なことだ。しかし彼らの技術は、投資や支援無しには実現できず、それらを得るのは容易ではないことを誰もが理解している。

多くのアフリカの起業家たちの前に立ちはだかるのが、資金不足、頻発する犯罪、汚職、不安定な政治である。政府による調達(購入)がない場合、多くの発明者たちは自らの社会的イノベーション進めていくために、民間セクターの利用を試みている。

関連記事What will it take to bring electricity to Africa’s poor?(アフリカの貧困層に電気を届けるには何が必要か?)

その好例が、ピーター・ミリアのEコン車いすだ。電気電子廃棄物から作られた彼の発明品は、階段を上り、道路以外の場所も走り、ユーザーを直立させることができ、さらには車いすの機能としては意外なデータ処理ツールにもなる。

その車いすによって、ケニアで障がい者登録をしている150万人が職場に溶け込み、偏見と闘う一助になることを、ピーターは望んでいる。

一方で彼は、Eコン車いすを健常者向けに販売することにも挑戦する。高性能仕様の車いすへの出資者を集め、それを幅広いコミュニティー向けの標準仕様の車いすのコストダウンにつなげようと計画している。

エドウィンも、ウサラマに関して同じような方策をとる。彼のチームは警察や州当局の協力を得ようと働きかけていたが、官僚主義と腐敗に阻まれてからは、警備会社への足がかりを得るため、関係企業と深いつながりのあるケニア警備安全協会(Prosak)と提携した。

エドウィンもピーターのように、やがては貧困層や弱者にも彼のアプリが広がることを期待している。「ひとたび民間の警備会社と手を組めば、政府にその方式の採用を説得する強力な根拠になります」、と彼は言う。

 システムを変える

ケニアの別の有力な候補者に、アレックス・マカリワがいる。大胆なビジョンを持ちながらも語り口は穏やかな青年で、ナイロビの運輸業界において重要な部分を担うトゥクトゥクに革命を起こそうとしている。彼が使用するは、オフグリッド[訳注:電力会社などが電気を供給する送電網から独立している状態]のソーラー充電ステーションのネットワークから動力を得る新型電動車両だ。

「私たちのトゥクトゥクは、日々の使用において、従来のトゥクトゥクよりも運用コストが30~70%安くなることが分かっています。クザ・オートモーティブの基本方針は、持続可能な輸送をもっと使い易くすることです」、とアレックスは述べた。クザにはその電動トゥクトゥクを量産する力はまだないが、需要増加によって販売価格が下がることを期待している。

電動トゥクトゥクの主な課題のひとつが充電時間だ。インフォーマル経済[訳注:定義はさまざまだが、一般的には主に開発途上国で多く見られる経済のことで、政府の管理や規制の影響が少なく公式経済統計にも含まれない露店、行商、廃品回収などから成る経済のことを指す]で働く運転手には、6~8時間の充電時間を待っている余裕がない。アレックスの解決策は簡単だ。「バッテリー切れが近づいたら、残りのバッテリーで数キロ以内にあるカズ充電ステーションまで走り、そこで空になったバッテリーと新しい満タンのバッテリーを交換します」

アレックスは、「アフリカでは電気を得ることが大変大きな問題である」ため、電気を動力源とした輸送手段の大規模な採用については見通しが立っていないことを認める。それでも適切な支援さえあれば、人々は喜んで変化を受け入れるだろうと楽観的だ。

「私たちは、単なる操業したての小さな会社にすぎません。人々の啓発は政府の役割です。政府が持続可能な輸送だけでなく、環境にやさしい技術全般を明確に支援しているところでは、物事は飛躍的に進みました」

 「向上させていくのは私の役目」

彼らの地域社会が直面する喫緊の課題への挑戦について、幻想を抱く候補者はひとりもいない。地域での調達、政府支援、幅広い持続可能な考え方が無ければ、これらイノベーションの多くはとん挫してしまうだろう。

しかしアフリカの若い起業家たちにとって、冷淡な環境や不十分なインフラは、技術的創造力の障壁ではない。

アレックスが、「世の中には先進国と途上国という物差しがあり、人々はそれに従って国を認識する」と端的に言い表しているが、しばしばこれが、リードするグループと後に従っていくグループ、という話を作り上げる。

「しかし私は脳みそを持った人間です。現実に問題のある場所に暮らしているからこそ、私が実際に向上させて解決策を推し進める役を担うのです」

関連特集:2016年5月号メイン記事「人間中心のテクノロジーとは」

工学イノベーション・アフリカ賞は、ロイヤル・アカデミー・オブ・エンジニアリングが創設し、自分たちの地域社会が抱える問題の解決策の開発に向け、サハラ以南のアフリカ諸国のあらゆる分野の技術者の育成を促進する。

アフリカ賞は、アフリカ大陸中から有能な革新的技術者を選び、訓練やアドバイスを行い、素晴らしいアイデアを持つ技術者が起業家として成功するよう支援している。

Africa Prize for Engineering Innovation

by ローレンス・イヴィル

NIブログ記事Meet Africa’s brightest young inventors の翻訳です。

翻訳協力:斉藤孝子



  1. 2017/02/04(土) 00:08:20|
  2. ビジネス・企業

【翻訳記事】苦いブドウを甘くする(南アフリカ)


20170129ロバートソン
ロバートソンのワイン
Daytona WinosCC BY 2.0


南アフリカの西ケープ州にあるロバートソン・ワイナリーで、労働者ストライキが成功した。南アフリカ政府はこの結果、南アフリカのいくつかのワイナリーのアパルトヘイトのような状態について調査せざるを得なくなった。

ブドウ園労働者は、低い給与、人種差別、殺虫剤が原因の病気を耐え忍んでいる。労働組合に加入する、あるいは不満を訴えた労働者は、解雇される可能性がある。しかし、政府に保護策はない。

「1994年[アパルトヘイトの撤廃]から状況は悪化しています。彼らはまやかしを隠そうとしますが、人々が奴隷のように扱われていることはあなたにも分かるでしょう」。こう説明するのは、14週間にわたるストライキを昨年11月に成功に導いた「商業・港湾荷役・農業とその関連産業労働組合(CSAAWU)」のトレバー・クリスチャン事務局長だ。

このストライキ参加者の状況は、おぞまし現実を暴いたデンマークのドキュメンタリー『Bitter Grapes』(苦いブドウ)で広まった。その後ボイコットが起こり、ロバートソンのワインは南アフリカからスカンジナビアまで、店頭から消えたのである。

CSAAWUは、ストライキを画期的な勝利と考えている。彼らは生活に十分なレベルの賃上げは達成できなかったが、すべての労働者に過去にさかのぼってかなりの増額分が支払われることになり、年間のボーナスも出るようになった。さらに、ストライキの指導者たちが懲罰を受けることもない。現在CSAAWUは、他のワイナリーで闘っているという。

クリスチャン事務局長は言う。「ワイン業界は変わらなければなりません。政府は、奴隷状態の実情について調査を余義なくされました。全国のワイナリーで働く労働者たちは、ロバートソン・ワイナリーの労働者たちの功績に刺激を受けるでしょう」◆

by ピーター・ケンワーシィー(Afrika Kontakt


2017年1/2月合併号NI499p7 Bitter grapes sweeten (South Africa) の翻訳です。c499-100.jpg



  1. 2017/01/29(日) 16:39:00|
  2. ビジネス・企業

【翻訳記事】課税逃れの偽装ゲーム


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地図をクリックすると本記事の英文ページが開きます。

租税回避はいくつもの対象地が関係する世界的なシステムによって行われており、金融分野での隠蔽と改ざんが何重にも行われる。今回はその対象と、誰が得をして誰が被害を被っているのかを見ていこう。

●米国
米国の資金が海外に流出するのを食い止めるために、米国は自らを最も重要な租税回避地のひとつとして作り上げた。巨大な金融産業は海外資本へ0%課税としており、汚れた資金を磁石のように引きつけてきた。デラウェア州、ワイオミング州、ネバダ州など州法が緩い州では、匿名のペーパーカンパニーの設立は容易である。

●グアテマラ
2013年グアテマラは、資金が違法に海外流出して25億ドル以上を失った。これは、教育分野の公的支出額合計よりも10億ドル以上多い額である。

●パナマ
悪名高い弁護士事務所モサック・フォンセカが拠点を置くパナマは、秘密主義を改めるよう国際社会から圧力を受けるが抵抗し続けている。パナマには現在、35万社の匿名のペーパーカンパニーが登録されており、海外企業は資金を上限なくパナマ国内に移すことができ、税金を払う必要もない。パナマ文書発覚時の改革の試みは、パナマ政府調査委員会のメンバーに就任したノーベル経済学賞受賞の経済学者ジョセフ・スティグリッツが透明性不足に業を煮やして辞任し、機能していない。

●ケイマン諸島
ケイマン諸島は、世界で6番目に大きな金融センターで、その金融資産は1.4兆ドル以上である。11万以上の投資ファンドが拠点を置き、そこには世界のヘッジファンドの半数近くが含まれている。ケイマン諸島の米国の投資額は、中国経済よりも大きいと考えられている。秘密主義に関する法律は非常に厳しく、場合によっては銀行の情報を尋ねるだけで投獄される可能性もある。

●英領バージン諸島
この国の企業登録数は、国民1人あたりに換算すると16社となる[訳注:日本の場合、2015年の商業・法人登記を参考にすると1人あたり0.02社程度]。この小さな海外領土は、世界でも最も簡単に匿名ペーパーカンパニーの登録が可能な国のひとつだ。緩い法律と余計な質問はしない方針の登記法は、実際に利益を得る人々が表面的なダミーを立てて隠れることを容易にする。

●アイルランド
法人税を1桁台に下げる移転価格[訳注:親会社と海外関連会社間の取引価格を操作して、税率の低い国への利益移転を図る]の大胆な形である「ダブル・アイリッシュ」で有名なアイルランド。この国は、アップル、フェイスブック、グーグルといった米国のIT大手のお気に入りである。アップルの低税率をめぐって先日起こった欧州連合(EU)との争いは、法人税回避企業の今後に影響をおよぼす可能性もある。

●ロンドン
ロンドンでは、金持ちの租税回避者たちが資金を隠すために不動産を利用しており、住宅価格が高騰している。市場が好調で固定資産税も低いため、違法な資金を一時的に置いておくには好都合な場所だ。現在平均住宅価格は平均年収の14倍になっている。

●ロンドンのシティ
[訳注:シティは現在金融街として知られるが、古くから商業と金融の中心として役割を担い自治権を有し、現在もロンドン市長とは別に独自の市長がいる。市長は経済・金融に関して独自の外交も行っている。]
王室属領[訳注:英国王室に属するが高度な自治権を持つ地域]と海外領土のネットワークの中心となっている。シティは、世界の大手金融機関の関心事に沿って物事が進むよう後押ししていくことが公式な務めとされている。オフショア[訳注:本国からの規制を受けない海外での金融取引]の世界が活発であり続けるよう「金融の自由」を確保するために、自らが持つ特別な法的特権を使って粘り強いロビー活動を行う。

●ルクセンブルク
ヨーロッパではスイスに次ぐ規模を持つ租税回避地である。緩い金融規制と低い法人税によって、ペプシコやウォルマートといった特に多国籍企業に人気がある。キャピタルゲイン[訳注:土地、債券、株式などの売却益のこと]への税率が低く、配当に対しては非課税であるため、この国はヨーロッパにおける投資ファンド(2兆5,000億ドルという膨大な資産を運用)の中心拠点となっている。

●スイス
改革の圧力にもかかわらず、スイスは依然として金融秘密主義の牙城で、開発途上国からの不正資金のお気に入りの目的地のひとつとなっている。専門家は、2兆3,000億ドル(全オフショア資産の大体3分の1)が、秘密主義のスイスの民間銀行に預けられていると推測している。

●ウガンダ
2010年の税金スキャンダルは、ウガンダの始まったばかりの石油産業を揺るがした。その原因は、英国資本のヘリテージ・オイル・アンド・ガスが、ウガンダの油田を売却した際に4億3,400万ドルの支払いを免れるため、住所をバハマからモーリシャスに移そうとしたためだ。この額はウガンダの1年間の税収の約5分の1に相当するが、長い法廷闘争の末にその一部がようやく支払われた。

●ザンビア
鉱物資源が豊かなザンビアでは、鉱山企業が移転価格スキームを使って税務当局の目をごまかしている。企業の課税逃れにより、ザンビアは年間20億~30億ドルの損失を被っており、それはおよそGDPの10~15%にあたる。国民の74%が1日1.25ドル未満で暮らしているこの国で、その失われた資金があれば、問題を抱える学校と保健医療について政府予算を倍にすることもできたかもしれない。しかしその代わりに、グレンコア[訳注:資源、農業の分野で生産、販売、投資を行うスイスの企業]やベダンタ[訳注:英国の資源会社]、あるいは他の企業の株主のポケットを膨らませることになった。

●ロシア
ロシアの金融資産の半分以上にあたる約2,000億ドルが海外に隠匿されているため、年間10億ドルの税収を得ることができない。租税回避は、特に政治エリートの間でよく行われている。プーチン大統領を含む政府高官の親類や知り合いたちは、オフショアの熱心な利用者である。

●中国
オフショアの対象国としては世界最大規模で、2001年から少なくとも1兆ドルの資金が違法に国外に流出している。これは、習近平国家主席の親類を含む国のエリートたちが、中国税務当局の目の届かないところに資産を移しているためだ。

●香港
自国の税務当局の目を逃れたいアジア資本の集積地として急成長している香港は、厳格な秘密主義の法律と金融規制には無干渉主義で通すという2つの特徴が相まって、汚れたカネを引きつけてきた。香港は、中国本土からの汚れたカネを、外国資本として装って再度中国本土に投資する「ラウンドトリッピング」という手法で知られている。


2016年12月号NI498p24-25「The dissimulation game」の翻訳です。c498-100.jpg





  1. 2016/12/30(金) 02:10:34|
  2. ビジネス・企業
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